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レジーナの鍵を握る小川愛の成長/サンフレッチェ広島レジーナ2-0ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

骨格ができあがってきた。そんな実感はある。

それは逆説的な言葉になるが、千葉が施した広島対策の内容によって証明された。

彼女たちは前半、強烈なプレッシャーをしかけて広島から自由を奪った。そのスタイルは千葉のスタンダード。ただ、彼女たちが重点的にマークしたのは、最前線の日本代表・上野真実でも、レジーナ最高のチャンスメーカーである増矢理花でもなく、アンカーのルーキー・小川愛だったことだ。

大宮戦のゴールもそうだが、レジーナの攻撃は小川のダイナミックな展開から始まる。アンカーの位置でピッチを睥睨し、視野を広く保って左右にボールを振っていく。明らかにゲームのリズムメイカーである小川に対して千葉は最大限の警戒を払っていた。

前半、レジーナのシュートがわずか1本に終わり、ボールを敵陣に運ぶことが難しくなってしまったのは、小川を封じられたことでレジーナがやろうとしているパス回しが厳しくなってしまったことによる。その唯一のシュートは右サイドバックの内田好美が放ったクロスに対して増矢がヘディングで放ったものだが、その起点はやはり小川の展開だった。千葉の対策は正しく、レジーナの肝は小川愛というルーキーが握っているのだ。

ハーフタイム、中村伸監督は選手たちにこんな指示を与えて送り出した。

相手のプレッシャーを自分たちが圧に感じていて、剥がせない時間が続いている。シンプルにあいている選手に(パスを)つけたり、自分で持ち出してかわしてパスを出したりしていこう、と。一つ剥がせれば、どんどん相手は崩れていくので、テンポのところを意識していこう」

それはもちろん、チーム全体に対して。ただ、ここで思う。

おそらくこのメッセージは、小川に向けてより強く、突き付けたのではないか。

「小川はトレーニングの中では、もっと難しい状況でもしっかりとプレーできている。まだまだこの先も、精度・判断も含めてやれることは増えてくるとトレーニングでも感じさせてくれている。だからこそ、千葉戦の前半はボールにからむ回数が少ないなと感じました。彼女も窮屈に感じながら、プレーしていた。でも、相手がフレッシュな状態でプレッシャーをかけてきてもやれるだけの力は、これから示してくれると信じています。もっとやれることは増やしてほしいし、できると思っています。期待できるところは、大きくなっていると感じますね」

試合後、こんな言葉で監督は小川に対する期待度を語った。彼女に対する期待感は、近賀ゆかりがピッチに入った後も交代せず、近賀をアンカーに据えて小川をインサイドハーフにあげたことからもわかる。レジーナの4-3-3のキーをにぎるのは、間違いなく慶応大から加入したばかりの22歳だ。

彼女が扇の要にいてボールを配給するからこそ、レジーナが得意とするサイドアタックも生命が吹き込まれる。

後半開始早々、彼女はダイレクトパスをカットされた。ピンチか。いや、そこは経験豊富な増矢がサポートし、カバーしてくれた。

凡庸な選手であれば、次はもうダイレクトでは出せなくなる。だが、その約15秒後、同じように左サイドバックの木﨑あおいから受けたパスをダイレクトで前回と同じ左ウイングの山口千尋に対してパスを出した。そして今度はしっかりと通して見せた。さらに上野真実がポストプレーからの浮き球をヘッドで川島はるなに繋ぎ、右に展開。立花葉のシュートを導いてみせた。

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