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SIGMACLUB9月号立ち読み版/青山敏弘×近賀ゆかり、LEGEND対談

 

ボランチとサイドバック パスの出し手と受け手

 

……WEリーグ開幕まであと1ヶ月となりました。そこで今回は、とにかくサンフレッチェ広島レジーナを応援したいということで、「レジェンド対談」をやらせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

青山●お願いします。

近賀●よろしくお願いいたします。

……青山選手は近賀選手のことを、どれくらいご存知ですか。

青山●もちろん、実績はわかっています。ワールドカップの優勝メンバーでロンドン五輪でも銀メダル。残されてきた実績は誰もがリスペクトしているところでしょ。ただ、それ以上のことは知らないので、今日、教えてもらいたいと思います。

……近賀選手は青山選手のことをどれくらいご存知ですか。

近賀●一言でいえば、広島のレジェンドだっていうことですね(笑)。

……プレーをご覧になったことは?

近賀●はい、もちろんです。私はずっとサイドバックをしていて、ボランチでプレーしているのはここ数年なんですね。その自分から青山選手を見ると、本当に視野が広くて展開力もありますし、ボールの質もトラップの質もすごいなという印象があります。

青山●女子の選手って、フィジカル以外のところにこだわっているなとすごく感じますね。質のところで勝負している。ワールドカップ優勝のメンバーでいえば、宮間あやさんなどは、本当にレベルが高かった。そういう選手たちを見てきた近賀さんがそう言ってくれるのは、すごく嬉しいです。もっともっと、いいプレーを見せたいですね。

……宮間さんは岡山の湯郷ベルでやっていたから、近い存在ですよね。

青山●はい。僕は作陽高出身だし、湯郷は(作陽高から)近かったので。同じサッカー場にいたり、一緒に練習したこともあったから。福元(美穂)さんも湯郷でプレーされていましたし、女子サッカーは身近にありましたからね。しかも、トップ・オブ・トップの選手が身近にいたことは、今思えばすごいことなんだなって思います。

近賀●青山選手はまさに、「走ったらボールが出てくる」感じなので。どっちかと言うと私は使われ屋というか走り屋なんで、使われる人がいてこそ生きるタイプ。青山選手のようなボランチがいると、サイドバックとしてはもう走っていればいいわけだから(笑)。

走れば出してくれるという感覚ですね。なでしこJAPANの時は宮間もそうですし、澤穂希さんも似た感じでしたね。自分のタイミングで走れば、そこにパスが出てくる。なので、(青山選手と)一緒にやって、パスを受けてみたかったなとの想いがあります。

……ボランチに転向してみて、改めて分かったボランチの大変さはありますか。

近賀●タイミングよく入って来てくれるボランチって、サイドバックとしては助かるんですよ。いいタイミングで(いいポジションに)入ってきてくれたりとか、オーバーラップしている時に「今だ」というタイミングでパスを出してくれたり。「自分を見てくれている」と感じられるボランチはやりやすい。

今、自分はボランチをやっているんですが、そこのところですごく難しさを感じます。ボールをもらうタイミングとか細かなポジショニングとか、すごく大事なんだなと改めて思いますね。視野の広さは技術が伴うものですが、私は技術に長けている選手ではないので(パスを出すべき)タイミングを見逃してしまうことが多いです。そういうところは、青山選手のプレーを見て勉強させてもらっています。

青山●でも、サイドバックを経験してからのボランチなので、サイドの意図がわかるっていうか、パスを出すタイミングも伝えやすいのかなって思いますね。今のタイミングは走れるとか、ここは待った方がいいとか、サイドの気持ちが分かるからこそ、使い方もわかりやすいのかなって思っているんですよ。

僕自身、サイドバックは公式戦ではほとんどやっていないですけど、それでもサイドでプレーした時の感覚って覚えていますしね。サイドの選手の使われ方はチームにとってすごく重要ですし、サイドでのプレーはボランチでも大きな経験になっていると思います。そういう意味では、近賀さんのプレーがすごく楽しみです。

……近賀選手、実は青山選手の公式戦デビューは右ウイングバックだったんです。

近賀●ええっ、知らなかったです(笑)。

……2008年のアウェイ山形戦でも、このポジション。

青山●そうです、そうです。

近賀●へえーっ。

青山●2008年の時の1試合だけで、サイドプレーヤーの感じ方を体感しましたね。たとえば、どうしてそこにポジションをとるのか、とか。中央の選手でも、みんな1回はサイドをやった方がいいと思います。

近賀●守備で言えば、危機察知の感覚。攻撃の時であれば、例えば相手がラインを上げてくるタイミングでこっちが(裏を狙って)ランニングするとか、(サイドをやっていたことがボランチで)生きてくることはたくさんありますね。

……近賀選手ご自身のボランチでのプレーは、青山選手とはスタイルが違いますよね。

近賀●私はどちらかというと、運動量多くというか、いろんなところに顔を出して、バランスをみながら(スペースを)埋めていくような作業が多いと思います。

……もし2人でダブルボランチを組んだとすれば、結構相性がいいのではないかと思います。近賀選手が潰して、青山選手が展開して攻撃に。

近賀●でも本音としては、サイドバックとして一緒に組んでみたかったです(笑)。青山選手がいればもう走り放題だし、走るタイミングもわかってくれている。きっと楽しいだろうなと思います。

青山●うん、やってみたいですね(笑)。今、男子チームの右サイドには、まだ経験不足な子がいるので(笑)。近賀さんは右でしたよね。

近賀●右です。右です。

青山●ちょうど、いいじゃないですか(笑)。

 

男子と女子の初対面 緊張した写真撮影

 

青山●でも、練習だけでもいっしょにしたいなって思いますね。

この間、男女で一緒に写真を撮った時に、みんなで話していたんですよ。一緒にボールを蹴ってもいいんじゃないかなってね(笑)。あの時、女子のみんなは遠慮されていたけど、でもこちらからすれば刺激を受けたし。

まあ、近賀さんとは絶対に違う感覚を持っているとは思うけれど、合うところは絶対に合う。レベルが高くないと感覚だけで相手を崩せることはないと思うので。僕が言わずとも、いいタイミングで走ってくれる人ってなかなかいない。だから近賀さんに1回、走ってもらいたいです。

近賀●いやあ、もう、そんなことができたら、最高ですね(笑)。

青山●(笑)。

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