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赤い迫力と紫の執念が織りなした、最後の10分間の物語/サンフレッチェ広島レジーナ 2-1 浦和レッズレディース

それはきっと、浦和にとっては突然訪れた、カタストロフィーへの前兆だったのか。

導いたのは、山口千尋と近賀ゆかりの走力、そして齋原みず稀の冷静だった。

81分、松原優菜をキリキリ舞いさせていた浦和の左サイドからクロスが入る。しかし、これはそれほど脅威ではない。中村楓、そして木﨑あおいがヘッドでクリア。

後半のレジーナは、セカンドボールを拾えないことで波状攻撃を受け、楢本光の差配によるワイド攻撃に散々、苦しんでいた。

この時も浦和のCBであり日本代表の高橋はなが、猛然と前に出てボールを奪おうとする。だが、ここで山口が抜群の冴えを見せた。高橋の鼻先で触ってボールをスペースに置くと、そのままドリブルに入ったのだ。激しいプレスをかけてくる佐々木繭(元日本代表)をかわし、ハーフウェイラインから縦パス。

齋原みず稀が右サイドで受けた。PA前だ。

仕掛けるか。いや、齋原はそんな個性ではない。アタッカー型の縦に速い選手が多いレジーナの中で、彼女はちょっと趣を異にする。

さいちゃんは上手い。シュートもパスも、そこのタイミングで出すんだとか、そこで打つんだっていう驚きでいっぱいなんです」

島袋奈美恵の証言である。

私生活も、そしてプレーでも、とんでもなく意表をついてくる。それが、レジーナの19番、広島出身の女子サッカー選手たちの希望といっていい、齋原みず稀だ。

ただ、このシーンは、冷静ではあったが、そこまで彼女のクリエイティブが生きた場面ではない。まだ、早い。

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