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荒木隼人の涙に重なった、6年前の塩谷司/広島1-4鹿島

 

泣いて、泣いて、泣き続けてしまった荒木隼人に、1人の先輩の歴史を、伝えたい。

2015年8月16日、塩谷司は先発でピッチに立った。そして3分、塩谷司は相手のパスをカットしようとしてクリスティアーノに入れ替わられ、そのままチームは失点してしまった。

「あのシーン、確かにパスを出した相手の態勢がよくなかった。ただ、自分が最悪の状況を想定できなかった。前に行こうという気持ちが強すぎた。結果から考えるのではなく、あのシーンは自分の判断ミス」

当時、塩谷はそう振り返っている。問題は、このミスを彼が引きずってしまったことだ。

「切り替えることは、難しかった。できなかったというのが、正直なところです。自分に対する悔しさや苛立ちばかりでした。あそこで失点しなかったらという思いが、消えることがなかった」

後半、またもクリスティアーノが爆発し、彼にハットトリックを許して広島は敗戦。優勝を争っていた広島にとって、痛い連敗となった。

「僕が全ての失点に絡んでしまった」

2点目はクリスティアーノの強烈な破壊力が際立ったシュートだったが、「自分がもっと寄せていれば」(塩谷)。確かにそのとおりで、後に映像を確認すると身体を寄せる決断に少し迷いが見えていた。それはおそらく、1失点目で入れ替わられたことが遠因だろう。

3点目は、柏好文のバックパスをさらわれたのがきっかけだったが、その時に塩谷が「早く、ポジションを開きすぎた」。その結果としてクリスティアーノをフリーにさせてしまって失点。

もちろん、客観的にみれば、全ての失点が彼だけの責任であるはずもない。失点は、チームの責任。それがサッカーの鉄則である。

だが、当事者はそうではなかった。

全失点を自分のせいだと背負い込んだ塩谷はその日、義兄が経営している店に1人で訪れ、そのまま時間を過ごした。

サッカーとは関係ない場所にいたかった。妻とも仲間たちとも離れ、1人でいたかった。

オフ明けのトレーニング。塩谷は「自分はもう使ってもらえないかもしれない」と考えた。森保一監督(当時)は情も厚いが、一方で勝負には厳しい。

「あれほどミスを繰り返したんだ。使われなくても、何も言えない。でも、自分はやるしかない」

実際、森保監督は塩谷と佐々木翔、両方を練習で試した。その上で、指揮官は塩谷を選択。次の新潟戦でも先発で起用した。

もし塩谷司が自分のミスをいつまでも引きずっていたら。逆にもし彼が、自分のミスを認めず、周りに押しつけていたら。

おそらくは練習でのパフォーマンスを森保監督が認めるレベルにまで、押し上げることはできなかっただろう。

新潟戦、負ければ3連敗。それは、優勝争いからの後退を意味した。絶対に負けてはならない、勝たないといけない試合だった。

押し込まれた。打たれたシュートは15本だったが、感覚的にはそれ以上。決定機もつくられたが、そこを防いだのは塩谷をはじめとするDF陣の気迫に満ちたシュートブロックだった。

「絶対にやらせない。絶対に諦めない。どんなに厳しい時でも、自分がやれることを探して、闘うんだ」

サッカーは技術のスポーツであり、フィジカルが重要であり、戦術眼が勝敗に直結する。だが、その全ての根幹にあるのは、気持ちだ。心理だ。精神論だけでは勝てないが、精神がなければ全ては始まらない。選手は、ロボットでもなければ、二次元のキャラクターでもない。人間である。人間である以上、心理や精神から逃れることはできない。

その気持ちが、ドラマを呼ぶ。

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