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柳瀬楓菜に期待したい。おおいに、期待したい

寒々とした、それでいてピンと張った冷たい空気に満ちた長野市には、日本でも有数の雰囲気を持つサッカースタジアム=長野Uスタジアムがある。収容人員は約1万5000人とJ1仕様ギリギリではあるが、U字型で覆われた屋根の形状が独特で、臨場感もあり、スタンドも全て個席。今は声を出しての声援は認められていないが、それができるようになればまた素晴らしい雰囲気に包まれるはずである。

これまでレジーナは、アウェイでは昔ながらのスタジアムでプレーしてきた。ホームの広域公園第一球技場も既に建設から約30年。その当時と今とでは、スタジアムに求められる機能性が随分変わった。ただ、広島は2024年に新スタジアム開業が決まっているのでそれはいいのだが、他のWEリーグのスタジアムは問題である。INAC神戸はノエビアスタジアム神戸、ジェフレディースはフクダ電子アリーナ、マイナビ仙台はユアテックスタジアム仙台と屈指のサッカースタジアムがホーム。しかし、他はどうか。WEリーグがこれから発展していくためには、その箱であり、ステージであるスタジアムとの関わりは、どうしても避けては通れない。そういう意味も含めて、長野Uスタジアム訪問は、楽しみである。

もちろん、ここで勝利を握ってこその「成果」となるのは当然だ。レジーナはここ2試合負けなし。だが、試合内容を精査してみると、決して自分たちが目指すサッカーが結実しているわけではない。近賀ゆかりが再三語っているように、レジーナは攻撃を基軸としている。だが、浦和L戦は2得点を記録してはいるものの、N相模原戦では相手の堅守を最後まで崩せず、0-0のスコアレス。チャンスの質という部分も量についても、物足りなさはぬぐえない。

中村伸監督は「試合では(ラストプレーの)もう一つ前のプレーでアイディアを出せていれば崩せている場面は、山ほどある。対策されたことはあるでしょうが、それよりも自分たちの問題。引いた相手に対しても、崩す一歩手前まではいけている。そこの精度を高め、すり合わせていくか」と語り、相手の対策云々よりも、レジーナの攻撃の部分での課題があることを指摘している。

ただ、この問題は多くのチームが抱えていることで、フィニッシュの精度やアイディア、ラストパスの部分も含めて、どう整備していくか。今、点がとれているチームは、この部分のクオリティが高いといっていい。そして、このラストパスを出せる選手やシュートを決められる選手がプロとしての価値を高く評価されることもまた、当然である。

この最後の仕事のところで最も期待されていた増矢理花を欠く広島にとっては、この問題を解決することは簡単ではない。誰もができる仕事ではないし、組織だけでは何とも処しがたい。今は川島はるなが孤軍奮闘という感じだが、彼女はアイディアを駆使するというよりも、チャンスメイクに絡んで研ぎ澄ましたプレーを見せる職人タイプ。また運動量が豊富な彼女はサイドに流れがちで、ここでチャンスを作ってくれてはいるが、そうなると中の人数が足りなくなる。

今はサイドでチャンスをつくった時に近賀が前に飛び出してシュートを狙ってはいるが、そもそも彼女のストロングはゴールを決めるところではないし、ラストプレーに関わるというよりも、その一つ前で力を発揮する。小川愛は優れたパサーではあるが、まだ自身がゴール前に関わっていく余裕はない。

だからこそ、柳瀬楓菜に期待したい。高い位置でも低い位置でもプレーでき、運動量もある。一つ一つのプレー精度も高く、アイディアも持っている。彼女が本来持っている能力がもっと解放されれば、もっと決定的なシーンが生まれる可能性もあるのだ。

相当に、期待しています」と中村監督は柳瀬について語った。

かつて、「楓菜は楽しくやってくれれば、それでいい」と言ったこともあるが、19歳とはいえ試合経験も積んだ彼女は「もうその段階は過ぎましたね」と指摘する。

「もっと得点に関わっていくところを求めたい。守備も、危険なエリアへの察知力が大切ですね。最終ラインに戻ってみたり、相手の攻撃を遅らせてボールを奪いにいったりするところの厳しさというか、そこはもっと高めてほしい。それが、試合にもっと出続けるために必要になってくる」

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