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【SIGMACLUB1月号立ち読み版】サンフレッチェ広島レジーナ・小川愛ドキュメント/信州の衝撃と、学ぶ力と

間違いなくレジーナのペースだった

 

信州の空に、歓喜が響き合った。だがその輪の中に入れず、ポツリと紫の女性たちがたたずんでいた。

呆然自失。「大辞林」によれば「あっけにとられて、我を忘れてしまうさま」とある。この四字熟語ほど、2021年1114日の長野Uスタジアム対AC長野戦におけるサンフレッチェ広島レジーナの状況にしっくりとくる表現はない。膝が崩れ落ちることも、地面に突っ伏す者も、泣きじゃくる者も、いなかった。ただただ、呆然。ただただ、自失。それ以外になかった。

後半アディショナルタイムに入るまでしっかりと握っていた勝点3を、わずか3分の追加タイムで、全て失ってしまった。過去、勝点3を勝点1にしてしまったことはある。今季もトップチームはホームの仙台戦や鳥栖戦、そしてアウェイの福岡戦でその屈辱を味わった。勝点1から勝点0も、当然、経験している。2007年、ホームのジェフ戦では2点差をつけていたのにアディショナルタイムで追いつかれたこともある。

だが、アディショナルタイムでの勝点3→勝点0という落差は、初めてだ。

その瞬間に立ち合った時の感覚を、言葉にすることは難しい。

筆者は1995年にサンフレッチェ広島の取材を始め、今年で27年目になる。トップチームだけでもトータル取材数は1100試合を超え、1999年4月10日対G大阪戦以降、今年で993試合連続して広島のトップチームを現地で取材している。その筆者のキャリアの中でも、衝撃度ではトップクラスだ。

何が起きたのか。

アディショナルタイム3分の表示が出された後、小川愛はコーナースポットへと向かった。もちろん、CKを蹴るためだ。

残り3分。1‐0でリードしている。この状況で何をどう選択するべきか。

ここまでの試合の流れを、ここで簡単にご紹介したい。

前半からレジーナは、全員の意識を高くもって相手に圧力をかけ続けた。最終ラインのミスから何度か相手にカウンターのチャンスを食らってはいたが、GK木稲瑠那の冷静さやDF左山桃子のカバーリングもあり、無失点でファーストハーフをしのぐ。後半もペースを握った広島は52分、松原優菜のミドルシュートが決まって先制する。その後も決定的シーンを数多く、レジーナはつくった。AC長野はほとんどチャンスをつくり出すことができない状況で、広島の勝利は揺るがないと実感していた。

小川愛のパフォーマンスも光っていた。いい形で守備のアプローチもできていたし、彼女の特長である大きな展開も決まっていた。

「これまでずっと課題にしてきたボールを奪い切るところ、球際での戦い、セカンドボールを拾うことなど、守備をまず意識して試合に入りました。1番最初のプレーでガツンといけたところで自分の流れになってきたと感じましたし、途中まではコートの中央でボールを触る回数やボールを奪う回数も今までの試合より多かった」

ただ後半の途中、やや疲労が見えてボールロストしたり、ミスも増えてきたようにも見えた。「疲れも迷いもあったように思います」と彼女は認めた。

交代が必要ではないか。そう感じた。だが、流れは決して悪くない状況で、チームの心臓部であるボランチを代えることは勇気がいる。この日のチーム構成でボランチが務められるのは柳瀬楓菜だけ。松原志歩も最近はボランチでのトレーニングを行っているが、その時はまだ中盤でのプレーは難しい。

この試合での後半、近賀ゆかりも奮闘を続けていたが、それゆえに疲労も蓄積されているようにも見えた。交代させるにしても、近賀か小川か、判断は厳しい。柳瀬を入れるにしても、1‐0での終盤という難しい判断が必要な局面での投入は難しい。

ただ、それは試合が終わってから考えたこと。「課題ではあるな」というくらいの想いしか、試合中は思っていなかった。終盤に来てもペースはレジーナ。追いつかれる空気は、まるでなかったからだ。

67分、レジーナはビッグチャンスを迎える。小川の右CKがファーサイドに開いた齋原のヘッドを正確に捉え、シュートが枠内に沈んだかに見えた。長野の選手が二度にわたってクリアしたが、その時ボールがゴール内に入ったようにも見えた。

「あれはゴールだと思った。めっちゃ副審を見ましたね(笑)」

J1なら確実にVAR案件となるべきシーン。しかし、WEリーグにはない。齋原のゴールは認められず、試合はそのまま1‐0のままで続いた。

「もしあれがゴールなら、試合の雰囲気も流れも変わっていた。ここまでセットプレーでのゴールがなかったし、とれたならチームにとっても大きな事だから。ただ、確実にゴールネットを揺らさないといけないんだなと思いましたね。最後のところはとにかくチーム全体で、ゴールラインを越えた後にでも突っ込んでいく気持ちが大切だってスタッフから言われていたので」

 

統一されていなかった意識

 

 

ただ、前述したように、ペースは広島のまま。84分には中嶋淑乃がPA内でシュートを放ち、左山桃子の見事な守備からカウンターもとれた。アディショナルタイムのCKも、そこまで広島が立て続けにチャンスをつくり続けての賜物だ。

小川はこの時、何を考えていたか。

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