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【2022年シーズンにむけて】リスクを負って前に出るのはゴールのため。

金沢戦の2・3本目に出場した棚田遼は、前線からの献身的な走りと創造性でチームに貢献した。

 

前からボールを奪いにいくことは、特別に新しいことではない。

「ポジショナルプレー」という概念が決してニューウェイブではない(昔から存在していた概念という意味で。例えばミハイロ・ペトロヴィッチ監督が10年以上も前に広島で表現したサッカーは、今考えれば「ポジショナルプレー」に近い)のと同様、前線の選手が守備に走ったり、ボールを奪いに行く守備にしても、新戦術とは言い難い。重要なのは、「ボールを奪いにいく」ことの目的がしっかりと提示され、それを徹底する信念の存在である。

松本泰志の守備の強度はかなり高くなっている。

 

筆者はミヒャエル・スキッベ監督がチームに植え付けようとしているコンセプトを、ユルゲン・クロップ監督がボルシア・ドルトムントやリバプールで表現している概念「ストーミング」なのではないか、と解釈した。指揮官自身は、決して「ストーミングである」とは言っていない。ただ、キャンプやトレーニングで表現しているサッカーを見れば、その言葉が最も適切であると感じるだけだ。

ストーミングとは何か。ここでは「footballista web」の2018年9月18日配信記事の「CL戦術総括:加速する攻撃優位。「ストーミング」が生み出すカオス」(片野道郎氏)から引用してみよう。


 世界のフットボール論壇におけるオピニオンリーダーの1人、サイモン・クーパーは、『ESPN』に寄せた記事でリバプールの戦術を評して、「攻撃的プレッシングはさらに加速され、『ストーミング』とでも呼ぶべきものに進化した」と述べ、この「ストーミング」こそが戦術の新しい時代を開いたのだと断言している。ここで言う「ストーミング」をもう少し具体的に定義するならば、ビルドアップに対する超攻撃プレッシングとボールロスト時のゲーゲンプレッシングを組み合わせた、敵陣でのアグレッシブな守備によるボール奪取とそこからのショートカウンターを中心に据えたゲームモデル、ということになるだろうか。


ボールを前線から奪いにいき、奪われた後の即時奪回を行うことは現代の「ポジショナルプレー」でもベースとなるもの。たとえば富士フイルムスーパーカップで浦和が前半の立ち上がりに見せたのも「ハイプレスと即時奪回」の守備だった。

だが、今季の広島はボールを奪った後、ボールを保持して敵陣で秩序を回復させる方法を第一義として捉えない。まず狙っていくのはゴール。そのためにボールを奪いにいく。

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