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インタビュー|アルビレックス新潟S GK 1 福留健吾 幾多の困難を乗り越えた不屈の守護神

異国でのゼロからの挑戦、歴史ある名門クラブでのプレー、1年間の無所属からのJクラブ復帰。今季のアルビレックス新潟シンガポールで新たに背番号「1」を背負う福留健吾の経歴は、数多いサッカー選手の中でも異彩を放っている。自身にとって海外再挑戦となるシンガポールの地で、31歳の新守護神は何を目指すのか――。

 

異国の地で最下層のアマチュアリーグから名門クラブでのプロ契約を勝ち取る

子どもの頃からプロ選手を目指しながらも、高校時代は全国選手権への出場を果たせず、大学時代も4年間レギュラーポジションを取ることはできなかった。当然Jクラブからの声が掛かることはなく、大学卒業後は単身ドイツへ渡り、プロ選手への道をゼロから目指すことを選んだ。

「ドイツで最初に入ったのは、上から数えて10番目のアマチュアリーグ。選手は全員仕事をしていて、夜7時くらいから集まって練習をしていました。僕はチームの練習や試合以外の時間は、語学学校でドイツ語を勉強していました」

その後、徐々にプレーするリーグのレベルを上げていくが、なかなかプロ契約を勝ち取ることはできず、サッカースクールでコーチをすることで生活費を稼ぎながら、日々のトレーニングを重ねた。「絶対にプロ選手になる」という強い信念がようやく実り、当時4部リーグに所属していたアレマニア・アーヘンのトップチームとの契約を勝ち取ったのは、ドイツに渡ってから5年目だった。

近年は下部リーグに低迷しているアーヘンだが、かつてはブンデスリーガで準優勝したこともある名門クラブで、本拠地のティフォリ・スタジアムは収容人数3万3000人を誇る。4部リーグでもホームゲームには常に1万人以上の観客を集めており、好ゲームともなればチケットが完売することもあったという。

「アーヘンではレギュラーポジションを取ることができなくて、ベンチにいる時間が長かったのですが、スタジアムの雰囲気は最高で、『これがサッカーの世界なんだ』というのを肌で感じることができました」

 

Jクラブ入団も3カ月で契約満了、1年間所属クラブなし。それでも諦めない強い信念

アーヘンで1年間プレーした後、日本へ帰国した福留は、2015年9月に水戸ホーリーホックへ「逆輸入選手」として入団を果たすが、当初はJリーグ入りを狙っていたわけではなかったという。

「アーヘンのあとも本当はヨーロッパの中で移籍をしたかった。ヨーロッパの1部リーグでプレーするというのが、ドイツに行ったときの目標でしたから。ただ、ヨーロッパ域内のパスポートを持っていないと選手登録が難しいという壁もあり、選択肢のひとつとして日本でプレーすることを考えました。自分でもコンタクトを取っている中で、水戸が練習に呼んでくれ、契約にいたることができました」

しかし、シーズン途中での加入となった水戸では出場機会に恵まれないまま、わずか3カ月で契約満了となってしまう。それから1年間は、無所属のまま個人でトレーニングを続けながら、国内外のクラブからのオファーを探し続けた。30代を目前にしての苦境に気持ちが切れてしまうことはなかったのだろうか。

「先が見えない不安感はありましたが、ダメだとは少しも思わなかったですね。1年間も所属クラブがなかったというと、大変だっただろうなと思われるかもしれませんが、僕自身はどのタイミングでも契約を勝ち取ってやるという気持ちでいて、結果的に1年たってしまったという感覚でした」

1年間にわたる臥薪嘗胆の末、2017年に当時J3へ昇格したばかりだったアスルクラロ沼津に入団し、GKの象徴ともいえる背番号「1」をつけることになる。しかし、1年目は怪我もあって出場機会に恵まれず、翌年もベンチ入りは続けながらもリーグ戦出場は1試合にとどまり、シーズン終了とともに契約満了が告げられた。

「GKというポジションはチームに1つしかないので、試合に出られない期間が続くのは当たり前のこと。そういう中でも自分の価値を高めるために目標やモチベーションを見失わず、いかに日々を重ねていけるかが大切。ベンチに座っていても、いつでも試合に出られるように準備していたので、(2年間で)気持ちが落ちるという瞬間はなかったですね」

沼津からの退団後に参加したJリーグ合同トライアウトの場で、福留に声を掛けてきたのが、アルビレックス新潟Sの重富計二監督だった。想像もしていなかったシンガポールからのオファーだったが、ドイツ以来となる海外への再挑戦に迷いはなかった。

「考えてもいなかったところからチャンスは来るものだと思いました。日本国内だけでなく、自分を必要としてくれるクラブなら世界中どこへでも行くという気持ちだったので、自分の中でチャレンジすることは即決でした」

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