【無料記事】【マッチレポート】ニューイヤーカップ 東京ヴェルディ vs 北海道コンサドーレ札幌(2016/01/24)
●東京ヴェルディ スターティングメンバー GK 1 柴崎貴広 DF 2 安西幸輝 DF 3 井林章 DF 5 平智広 DF 6 安在和樹 MF 28 楠美圭史 MF 10 高木善朗 MF 13 船山祐二 FW 14 澤井直人 FW 18 高木大輔 FW 7 杉本竜士 (ベンチメンバー:GK26長谷川洸。DF15ウェズレイ、24林昇吾。MF16中野雅臣、20井上詩音、23田村直也。FW9アラン・ピニェイロ)
■気温8.9度、吹きすさぶ風
1月24日、2016Jリーグ・スカパー! ニューイヤーカップが開幕し、東京Vは札幌と今季初の対外試合を行った。場所はキャンプの拠点を置く、沖縄・西原町民陸上競技場。ふかふかの芝生が敷かれ、ピッチコンディションは抜群に良い。
キャンプインからわずか3日で迎えたゲームとあって、「早めの始動したメンバーを中心に選びました」と冨樫剛一監督。GKは柴崎。最終ラインは右から安西、井林、平、安在。アンカーに楠美を配し、インサイドハーフに船山、高木善。3トップは右から澤井、高木大、杉本の並びである。控えのGKは、鈴木椋大が発熱、太田岳志が手の打撲で、急きょ、ユース出身の長谷川(日体大3年)を東京から呼び寄せた。
昨季までの基本フォーメーション[4-4-2]に加え、今季は[4-3-3]の形をモノにしたい考えが冨樫監督のプランにある。2列目は選手層が厚く、さまざまなタイプを取り揃えており、このチーム編成の特長を有効に使わない手はない。
「風下に立たされた前半は主なテーマに挙げたビルドアップ、攻守の切り替えがあまりうまくいかなかったですね。ボールが中盤を飛び越すシーンが多くて」(冨樫監督)
気温8.9度の寒さに、横殴りの強風。それでもキャンプで取り組んできた練習の成果は一部に垣間見えた。37分、裏に抜け出す澤井にロングパスが送られた一連のプレーがそれだ。高木大の正確な落としから、安在、高木善、楠美がダイレクト、あるいはツータッチで素早くボールを動かし、長いボールで相手の目先を一気に変えた。
後半、東京Vは矢継ぎ早に選手を替え、登録メンバーはすべて出場。73分、田村を投入して以降は中盤の底に2枚置いた[4-4-2]に変更している。
「後半は守備のポジショニングを修正し、攻守の切り替えで先手を取れるシーンが増えた」(冨樫監督)
■高木大の拳骨スタイル
この試合、唯一の得点は終了間際の89分に生まれた。ボックス内に侵入した中野が倒され、PKの判定。すぐさまボールを拾いに行き、蹴る意思を示したのは高木大である。
「雅臣に『な、いいだろ?』と言って、タムさんも行けと言ってくれたので。ただ、おれの心の声を言うなら、あのときは入る気がしなかったんですよね。それで自信のある方向に思い切って蹴ろうと」
不安に囚われながら開き直り、左下にズバンッと決めてしまうのは高木大のらしさか。「昨年は開幕まで1点も取れなかったんですよ。いいスタートが切れてよかったです」と、安堵の表情を浮かべた。
高木大は成長著しい選手のひとりだ、肉体がさらに強化され、プレーの幅をぐんぐん広げている。以前はサイドに追い込まれ、手詰まりになることが多々あったが、局面を自力で打開できるようになってきた。「少し余裕が出てきたんですかね。苦しい状況でも落ち着いて対応でき、相手の股の間が見えるようになってきた」とは、昨年末にシーズンを振り返った際のコメントである。
相手にぶつかるとき、ゴール前に飛び込むとき、高木大の全身は拳骨のようになる。あの渾身のパンチは相手にとって脅威だ。「いや、まだまだです。前線の起点として機能するように、もっと競り合いに強く、よりプレーの精度を上げていかなければ」と少しも満足を覚えていないのが頼もしい。
中後雅喜が筋肉系のトラブルで大事を取っており、楠美が攻守のコントロール役を務めた。全体を通してまずまずの安定感を示したが、特長の縦パスを活かすにはより主体的にプレーし、周りを動かす試みが必要になってくるだろう。ピッチ上の存在感、リーダーシップにおいて、中後とはまだ雲泥の差がある。
結果、1-0の勝利を収めたが、現時点で勝敗は重要ではない。セットプレーのトレーニングにはまだ一秒も時間を割いておらず、課題を抽出することが目的だ。
「自分たちが主導権を握っている時間なのに、相手に攻撃を許すことが何度かあった。このあたりは試合から得られた課題ですね。優先順位をきちんと整理し、いいボールの奪い方から攻撃につなげていきたい」(冨樫監督)
ニューイヤーカップは残り2試合。27日にFC琉球戦、30日にFC東京との東京ダービーに臨む。
(了)