「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【練習レポート】「町田には勝ちたい」平智広(2016/02/17)

■炎のカウンターアタック

今日の練習メニューは、ウォーミングアップのあと、ポゼッショントレーニング、CKの守備から仕掛けるカウンターアタック、縦パスを入れて相手を横に大きく揺さぶってからのクロス&フィニッシュ、最後は7対7の2タッチゲームで締めた。

見ごたえがあったのは、CKでの守から攻へと素早く切り替えるカウンターのトレーニングだ。GKがボールを持った途端、ドン、ドン、ドンと3人が飛び出し、ディフェンスも同数の3人が全力で戻る。攻撃は最小限の手数でシュートまで持ち込むことを目的とし、守備はディレイしつつ要所を押さえることが求められた。相手を崩し切るより、隙あらば打つミドルシュートがわりと決まる。

別メニュー調整組は、高木大輔、南秀仁、アラン・ピニェイロ、永井秀樹、中後雅喜、鈴木椋大の6選手。いずれも2月28日の開幕戦を目標に懸命のリハビリを続けているが、無理を通して症状を悪化させたら元も子もない。起用には慎重な判断が必要だ。

突き進む北脇健慈、追う澤井直人。

 

井上潮音をかわし、シュートを放つ平本一樹。

■的確な状況判断と行動力

全体練習終了後、ヘディングの練習を行っていたのは平智広である。先日開催された「VERDY FAMILY FES. 2016 inよみうりランド」以来、僕は彼の言動に注目している。

新加入選手のトークショーがあり、お決まりの自己紹介から始まった。そこで、日テレ・ベレーザの三浦成美はにっこり笑って「Mです」のフリップを出す。10代、20代の人たちからすれば、なんてことはないポピュラーなワードだ。「人からイジられることが多くて」と快活に話した。

会場の年齢層は幅広く、ご年配の方も多かったから、ドキッとしたのだと思う。ややざわつき、落ち着かない空気が流れた。おっさんである僕は、SM小説の大家、団鬼六の『花と蛇』(幻冬舎アウトロー文庫)を浮かべていた。

すると、そこで平智広。ぱっとカットインして「Sです」と書いたフリップを出す。「ちょうどいいですね。よろしく!」ときれいに場を収めてみせた。的確な状況判断と行動力に舌を巻いた。

後日、平にそのときの話を訊くと、「あそこは拾ってあげたほうがいいかなと。放っておかれたらかわいそう」。どうですか、この気遣い。現代日本の騎士道精神。ポジションが前の選手より、後ろの選手のほうが周囲に気を配れるタイプが多いというのはよく言われるが、今回もそれを裏付ける格好となった。

さて、平は冨樫剛一監督直々のラブコールを受け、ユース時代を過ごした東京ヴェルディに復帰を決めた。井林章とセンターバックのコンビを組み、堅固な守備組織の構築に一役買ってもらいたいと期待されている。

「悩みましたね。お世話になった町田には愛着があり、ここでもっと活躍したいという思いがありました。J2・J3入れ替え戦のあと、冨樫さんから『おめでとう。元気か?』と電話をいただき、獲得の考えがあることを聞かされました。町田側とも話し合い、2週間ぐらい考えたかな。最終的にはヴェルディに対する思いが勝った。ユースの頃、トップでプレーするのは目標であり、夢でしたから」

3月26日、J2第5節、『東京クラシック』と銘打たれる、FC町田ゼルビアとの対戦が予定されている。双方のサポーターが平のプレーを注視するに違いない。

「勝ちたいです。3年間、町田に育ててもらった身としては、自分の成長した姿を見せることが何よりの恩返しになる」

 

写真=kitasumi

おそらく「S」ではない平智広。 写真=kitasumi

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