「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【マッチレポート】J2-5[H] FC町田ゼルビア戦『東京クライシス』(2016/03/27)

2016年3月26日(土)
J2第5節 東京ヴェルディ vs FC町田ゼルビア
16:03キックオフ 味の素スタジアム
[入場者数]5,166人 [天候]晴、弱風、気温10.5℃、湿度55%

東京V 0-1 町田
前半:0-0
後半:0-1
[得点]
0-1 鈴木孝司(90分)

●東京Vスターティングメンバー
GK1  柴崎貴広
DF2  安西幸輝
DF23 田村直也
DF3  井林章
DF6   安在和樹
MF30 高木純平
MF13 船山祐二(46分 高木大)
MF11 南秀仁(69分 楠美)
MF10 高木善朗
MF9  アラン・ピニェイロ
FW25 平本一樹(78分 北脇)
(ベンチメンバー:GK26太田岳志。DF5平智広、19大木暁。MF14澤井直人、28楠美圭史。FW18高木大輔、29北脇健慈)

監督 冨樫剛一

■負けしろのあるうちに

リーグ序盤における戦いは、勝ち方より負け方が重要だ。勝点を積み上げるのと同じくらい、ひょっとするとそれ以上に中身のある負け方が大事になる。

すべてのチームには、負けしろが用意されている。負けしろは一律ではない。目標設定の高さによっても変わってくる。たとえば、セレッソ大阪のように、充実した戦力、資金力を備えるクラブは、他よりアドバンテージがある。地力の差で相手を上回り、結果を出していくことで負けしろを保全し、またシーズン中の補強によって大胆に手を加えることも可能だ。

ほとんどのクラブはそうではない。限られた負けしろをどう使うか。ここが指揮官の腕の見せどころで、その先に大きく影響する。よって、現状の力を出し切り、チャレンジしたうえで敗れるのであれば、歓迎していいくらいだ。リーグ終盤になるとこうはいかない。勝点1のため、得失点1のために手段を選んでいる場合ではなくなる。このとき行為を正当化するのは結果だけだ。

どんなチームも、負ける。負けしろのあるうちに、敗戦から学ぶ。多くを学んだチームだけが最終的に昇格戦線に生き残り、ラストスパートの伸びにつなげられる。やがて如実に表れるチーム力の差に比べれば、リーグ序盤の星取表など取るに足らぬことだ。

この時期、J2の22チームは勝点を競っているように見え、そのじつは負け方を競っている。僕はそういう見方をしている。

■プレッシャーとは

『東京クラシック』と銘打たれた、FC町田ゼルビアとの一戦。開始から主導権を握ったのは町田だった。ボールホルダーへの寄せが速く、球際も強い。特に、通常なら余裕をもってボールを保持できるエリア、サイドへのプレッシャーは徹底されていた。苦しまぎれの縦パスはほとんど相手に渡り、セカンドボールの拾い合いも町田が制した。

東京Vがボールを奪い、押し返せそうな場面もあった。しかし、カウンターを発動させる1本目、あるいは2本目のパスがことごとくつながらない。前半、東京ヴェルディのシュート数はゼロ。何もさせてもらえず、ゲームを折り返した。

内容的に見どころなしの45分だったが、考えようによっては0‐0で済んでラッキーだ。相手の攻撃のクオリティが高ければ、1点や2点はとっくに失っていたところである。まだあと半分あると気を取り直して喫煙所に行き、かつて東京Vの監督や強化の責任者を務めていた小見幸隆さんとばったり会った。

「プレッシャーってのはね、さらされるものではなくて、味わうものなんだよ」

この言葉にすべてが詰まっているなあ、と僕は思う。

「おいでおいでと相手を誘い、対峙している時間から、距離、駆け引き、向こうの必死な表情まで全部を味わう。ヴェルディの選手からは、奪えそうな気がするもん。ボールを足元に置いたとき、顔が上がっていない。下を向き、自信なさげに見える。だから、相手は恐れずに距離を縮めてくる」

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