「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.8 直観の人~MF20 井上潮音~(2016/06/16)

充実のプロ1年目を過ごしている。今季、東京ヴェルディユースからトップに昇格した井上潮音。開幕戦でメンバー入りし、J2第11節のモンテディオ山形戦で初スタメン&Jリーグデビュー。第14節の清水エスパルス戦では途中から出場し、攻撃のリズムをつくってチームの勝利に貢献した。以降、4試合連続でスタメン出場を続けている。
高い技術と戦術眼、卓越したパスセンス。相手の逆を取る巧さ、鮮やかなターンに何度うならされたことか。ボールが井上を経由することで、あれよあれよと攻撃がスムーズに回りだすのが不思議だ。この人の眼に、サッカーはどう映っているのだろう。

■セレソンに憧れて

2002年のFIFAワールドカップ・日韓大会、井上潮音はブラジル代表のロナウド、ロナウジーニョにひと目ぼれ。カッコよく、巧く、何より楽しそうにプレーしていたのにハートを射貫かれた。

小学1年、神奈川から東京への転居を機に、井上はJACPAのサッカースクールに通い始める。朝早くから友だちと集まり、放課後は暗くなるまで、サッカー漬けの毎日が始まった。そして小4の冬、母のすすめにより、東京ヴェルディジュニアの新小5セレクションに申し込んだ。

当時、育成年代を受け持っていた冨樫剛一監督がたまたまセレクションを担当し、「合格。すぐ獲れ」と即決。東京Vジュニアの監督を務めていた大嶋康二(FCトッカーノ総監督)はこう語る。

「第一印象は、ちっちゃくて、かわいい子。それを言うなら、いまもかわいいですけどね。その頃は無邪気に感情を表に出していた気がしますが、どちらかといえば口数が少なく、自分からしゃべるタイプではなかったです。こちらが話しかけると、ぼそぼそっと返してくる。一方で、芯の強さのようなものは感じたな。聞かれたことに対し、一生懸命に考え、自分の言葉で話そうとしていた」

やがてはプロとなる才能の片鱗は見せていたのだろうか。

「将来、間違いなくトップに上がるとイメージできる選手ではなかったです。特別な面はありましたよ。潮音は小学生なのに大人のような感覚でサッカーをやっていた。たとえば、『もっとシンプルにプレーしよう』と言葉で言っても、ほとんどの子はできません。言葉の意味、狙いをきちんと捉えられない。でも、潮音は最初からできていた。教えなくても、シンプルにプレーすることの価値を知っていました。ピッチの状況を見て、どんなプレーが効果的なのか。どうやってボールを運べば、ゴールにつながるのか。直観的に見抜いていた。長けていたのは、そういったサッカーセンス、戦術理解の部分ですね。今後、最大の伸びしろはそこだろうなとコーチ仲間と話していたのを憶えています」

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