「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【インタビュー】A Secret on the Pitch ピッチは知っている〈1〉 岩清水梓(日テレ・ベレーザ)前編(2016/07/01)

A Secret on the Pitch ピッチは知っている 〈1〉
『もう一度、ここから』岩清水梓(日テレ・ベレーザ) 前編

なでしこジャパンの最終ラインには、いつも岩清水梓がいた。2011年、FIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会優勝。2012年、ロンドン五輪の銀メダル。近年の躍進を支えたひとりだ。今年、リオデジャネイロ五輪最終予選は3位に終わり、本大会の出場権を逃した。大きな目標を失ったいま、岩清水は何を思うのか。

■ベテランと若手の融合

――今季の日テレ・ベレーザ、好調ですね。首位を快走中。森栄次監督は「センターバックのイワシとカツオ(村松智子)ががっちり守ってくれるから、若い選手が多くても安定している」と語っています。
「自分たちが自信を持って戦えている理由も、若い選手のおかげ。彼女たちが前からボールを追ってくれたり、何人もがひとつのボールに顔を出す。何度も動き直す。そういったプレーを後ろから見ていて、すごいなあと思います」

――ベテランと若手がうまくかみ合っている。
「そうですね。ベテランだけ、若手だけ、ではサッカーにならない。昨年、なでしこリーグのタイトルを獲得できたことで、そのあたりのバランスの大切さにはあらためて気づかされました」

――ベテランとして、キャプテンとして、気をつけていることは?
「試合中はどうしてもうるさく言っちゃうんですよ。自分が守りやすいように、ボールの追い方、足を出す角度、距離感などを。言葉も多少きつくなる。私生活、オフについては、ああだこうだ言いません。自分が混ざっていったら気を遣うだろうから、一歩引いて」

――「みんな~、ごはん行くよ~」と引っ張っていくことは?
「たまにあるけど、気を遣います。自分が誘ったら、若い子はハイって言うしかない」

――まあ、イワシさんから言われたらね。
「できるだけ、適度な距離感を保つように意識しています」

――体育会系のノリは好きではない?
「あんまり好きじゃないですね」

――ベレーザの気風は違う。
「学校スポーツとは違うでしょう。実力主義。メニーナ(ベレーザの育成組織)の頃からピッチに出れば年齢は関係ないよ。ずっとそう言われて、育ってきているので」

――じつは、今季のベレーザはちょっと苦しいんじゃないかと僕は思ってたんですよ。昨季、10番を背負い、パスワークの中心だった原菜摘子さんが引退された影響は大きいだろうと。メンバーを見ても、若さゆえに経験値の低い選手が多い。
「最初は中心が変わってどうなのかと多少不安な面はありましたけど、原の代わりにやっている中里(優)が試合を重ねるごとに頼もしさを増しています。昨年から試合に出始めて結果を出し、持ち前の真面目さも手伝って、みんなすんなりと受け入れました」

――中里選手は真面目ですか。
「すんごい真面目。さまざまなことを貪欲に吸収しています。得点力だったり、原にはないものも持っている。年齢的にはもう中堅の立場かな」

――といっても、まだ21歳。ハタチ前後の選手は粒ぞろいですね。
「面白い選手は何人もいます。今年は長谷川(唯)が非常に調子いいですよ」

――長谷川選手は、気も強そうだなあ。
「かなりの負けず嫌いですね。ちょっと前まではパフォーマンスの波が大きく、ダメなときはほんとにダメだったんだけど、今年はわりと安定しています。調子が悪いなりにプレーするやり方を覚え、波の幅が小さくなってきましたね」

次のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ