「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【インタビュー】A Secret on the Pitch ピッチは知っている〈1〉 岩清水梓(日テレ・ベレーザ)後編(2016/07/08)

A Secret on the Pitch ピッチは知っている 〈1〉
『もう一度、ここから』岩清水梓(日テレ・ベレーザ) 後編

※前編はこちら

■帰ってくる場所があることのありがたさ

――僕はリバウンド・メンタリティに興味があるんですよ。ショッキングな現実に直面し、再び前を向くには、どんなふうに内面を立て直していくのだろうと。あ、そうだ。あの話も聞かせてください。2015年のFIFA女子ワールドカップ・カナダ大会決勝のアメリカ戦。前半の途中で下げられたのは、岩清水選手のキャリアで初ですよね。
「ないですね」

――失点に絡んだのは事実です。あのときは「やってしまった」、それとも「なんで下げられるんだ」のどちらですか?
「後者はないです。やっちゃったというか。自分では最大限のプレーはしたつもりですが、結局は失点に絡んでるんだからそうだよなと」

――納得とも違うのでは?
「そうですけど、くそっとも思えない。反骨心までは出なかった」

――打ちひしがれた。
「そんな感じです」

――それからクラブに帰ってきて。
「あまりその話に触れられなかった。頃合いを見計らい、いじってくる人はいましたけど。基本、ベレーザのことしか言ってこない。ここでやることをやろうと切り替えられました」

――周りの気遣いを感じつつ。
「はい。みんな、おかえり、おかえりと笑顔で迎えてくれて」

――クラブって、あったかいなあ。
「ほんとそう」

――帰ってくる場所あるっていい。
「このクラブはいろんな人がいますから。女子だけのクラブじゃないですし」

――高木大輔みたいなわんぱく小僧もいて、いつもの調子で「イワシさん!」と元気いっぱいに。
「『もう、なにやってんすか!』。さすがにそうは言ってこなかった」

――そりゃそうですよ。彼ら、岩清水選手のこと、尊敬してますからね。
「うそだ~」

――同じサッカー選手ですから、偉業はわかります。
「そういえば、一昨年のアジア大会で、五輪代表の野津田岳人選手(アルビレックス新潟)や岩波拓也選手(ヴィッセル神戸)と初めてしゃべったときに言われたことがありました。『自分たちのキャリアのなかで、オリンピック準優勝、ワールドカップ優勝なんてまずない。尊敬しますよ』なんて。自分からすれば、Jリーガーはテレビでいつも見ている人たちだから無条件にすごい。そんなふうに思う人もいるんだなあと」

次のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ