「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【マッチレポート】J2-29[H] 横浜FC戦『かくも1点は遠く』(2016/08/15)

■どうせなら濃い負けの味を

「たった一回の長いボールから、あっさり背後を取られてしまった。相手がシステムを変えてきたこともあり、そこでのチャレンジ&カバーがうまくいかなかった。非常に悔いが残ります」

と、冨樫剛一監督は、66分に奪われた先制点を回顧した。横浜FCが放り込んできたロングボール、平智広のヘディングのクリアが浅く、ポンポンと2本のダイレクトパスをつながれ、イバに独走を許した。

「あんな簡単に点を取られるなんて……。イバ選手との距離を詰め、どうにかシュートコースを消したんですが、最後はタイミングをずらされて横を通されてしまった」

と語るのは、無念さを露わにゴールポストを蹴り上げた鈴木椋大。「失点の場面は両方とも自分たちのポジショニングが悪かった。それをコーチングで修正できない僕の実力不足です」。

勝敗の分水嶺となるゴール前の攻防。結局、そこで何ができるのかが、チームと選手の値打ちの大部分を決める。

理不尽に思える敗戦もサッカーの一部であり、かっちりとつくり込まれたウェルメイドなスタイルを好まない僕は(今季、首位を走るコンサドーレ札幌がそうだ。個人の趣味の問題)、たまにこんな目に遭うのを半ば覚悟している。なんでこうなっちゃうの? という不合理性は、東京Vの魅力とも表裏一体だ。

ただし、同じような不用意なミスでも、そこには違いが存在する。横浜FC戦のそれはレベルが低く、ピンチを招く回数も多すぎた。せっかくいいサッカーをやっても、それではゲームが締まらない。どうせなら深く刻みたい負けの味が、淡泊に感じられてしまう。このあたりを解決しなければ上には行けず、残留争いから脱せていない現状では、なおさらシビアに追求していく必要がある。

「ゴールを奪う、ゴールを守るという肝心なところで相手に上回られた。サッカーではひとつのミスでやられてしまう。逆に、自分たちも相手のミスを突くことで勝つチャンスを得る。その部分で隙を見せてしまった結果だと思います。90分のなかでの集中力、声をかけ合うという部分が足りなかった」

冨樫監督はこのように横浜FC戦を総括し、次のゲームに目を向ける。

「継続していく部分は、前へのプレッシャーを持ち続け、人とボールを追い越していく選手を増やしてくこと。改善すべきポイントは、前後左右の声がけや、守備のチャレンジ&カバーの徹底。ディフェンスが横並びになるとやられてしまうので、縦の関係で中央に集結し、相手を内側に入らせない守備をすること。いいボールの奪い方をして前に出て行けるように整備し、次の徳島ヴォルティス戦に臨みたいと思います」

徳島戦は、警告の累積により井林が出場停止だ。はたして、最終ラインの構成はどうなるのか。

 

【ハイライト】東京ヴェルディ×横浜FC「2016 J2リーグ 第29節」

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