【フットボール・ブレス・ユー】第12回 十年前のあの日から ~松本山雅FC 喜山康平~(2016/10/05)
第12回 十年前のあの日から ~松本山雅FC 喜山康平~
袴越山の麓、美ヶ原温泉のそばにある、かりがねサッカー場。2015年春に開場した、松本山雅FCの練習場だ。
9月29日、飯田真輝のインタビュー取材があり、僕はここを訪れた。
松本には、飯田のほか、田中隼磨、那須川将大、喜山康平、鈴木智幸、キローラン菜入など、過去東京ヴェルディに在籍した選手が多い。フロントやコーチ陣にも、松本に移った人たちが何人もいる。
現在、松本は2位につけ、二度目のJ1昇格に向けてひた走っている。練習の雰囲気は、緊張の糸がピンと張っていた。選手たちは意外とおとなしいなと感じたが、ゲーム形式の練習に移ると、四方八方からやかましいくらい声が出る。じつにメリハリが利いていた。驚かされたのは、スタッフの多さだ。総勢、およそ15人。反町康治監督を中心に、分業制でメニューがちゃっちゃと進行する。
練習後、反町監督の囲み取材があった。「飯田に話を聞きに来たんでしょ? 時間までいればいいじゃん」と言ってもらい、末席に加えていただいた。
この日、集まったメディアは僕を含めて7名。用意のいい人がいて、最初にお茶が配られた。次にせんべいが回ってきた。甘いお茶菓子も出てきた。せんべいをポリポリかじりながら、取材が始まる。お茶菓子はたまたまらしいが、この風景は毎日だそうだ。あけすけな口調で反町監督が話し、たまに笑いが起きた。
僕がぽつんとしているのを気にしてか、「どうなのよ、ヴェルディは」と反町監督が水を向けてくれた。いや、どうもこうもと口をごにょごにょさせていると、「ヴェルディは個人の能力は高い。チームとしての力もある。だが、守備がいい加減すぎる」とぴしゃりと言われた。
自分から聞いといてなんだよと思ったが、このあたりが反町監督の面白いところである。ほかの誰が、こんなふうにズバッと言ってくれるだろう。
5ヵ月前の対戦では、0‐4で軽く転がされた。完敗だった。ぐっと口をつぐむしかない。どうせなら、どこがどういい加減なのか話してくれるといいのだけど、酸いも甘いも嚙み分ける指揮官はそこまでお人よしではない。自分で考えろと言われるに決まっている。
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