「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【マッチレポート】J2-37[A] 北海道コンサドーレ札幌戦『番狂わせの理由』(2016/10/23)

2016年10月22日(土)
J2第37節 北海道コンサドーレ札幌 vs 東京ヴェルディ
14:03キックオフ 札幌ドーム
[入場者数]18,868人 [天候]屋内、無風、気温21.7℃、湿度52%

札幌 1‐2 東京V
前半:0‐1
後半:1‐1
[得点]
0‐1 高木大輔(30分)
0‐2 ドウグラス・ヴィエイラ(60分)
1‐2 福森晃斗(77分)

●東京Vスターティングメンバー
GK1   柴崎貴広
DF2   安西幸輝
DF23 田村直也
DF5   平智広
DF6   安在和樹
MF33 渡辺皓太
MF28 楠美圭史(61分 二川)
MF10 高木善朗
MF14 澤井直人(89分 ウェズレイ)
FW17 ドウグラス・ヴィエイラ(79分 アラン)
FW18 高木大輔
(ベンチメンバー:GK31鈴木椋大。DF15ウェズレイ。MF13船山祐二、32二川孝広。FW7杉本竜士、9アラン・ピニェイロ、29北脇健慈)

監督 冨樫剛一

■先制点は、キャプテン大輔

この土壇場で、あの男、ほんとにやりやがった――。

コーナーフラッグをつかみ、雄叫びを上げる高木大輔を、僕は信じられない思いで見つめていた。ゴールをアシストした高木善朗が抱きつき、仲間たちが続々と祝福に駆け寄る。高木大の左腕、アウェー用の白シャツに赤い腕章がよく映えた。

先制したのは、東京ヴェルディ。30分、安西幸輝の早いリスタートから、高木善の縦パス、裏に抜け出した高木大の右足が札幌のゴールを破った。

札幌ドームを埋める北海道コンサドーレ札幌のサポーターが何事もなかったかのようにチャントを続けるなか、スタンドの一角、精鋭中の精鋭が集う緑の一団だけは沸騰したごとき騒ぎだ。

相手は、首位をひた走る札幌。しかも、11連勝中、23戦無敗という難攻不落のホームである。対する東京Vは18位で、中心選手の中後雅喜や井林章を故障で欠く。どれほど目を凝らしても、勝算を見出すのは困難だった。

だが、これに抗い、東京Vが戦意を高め、戦略を練って札幌に乗り込んできたのは、この日の戦いぶりが証明していた。楠美圭史のミスを田村直也がカバー。渡辺皓太が抜かれても、前線から戻ってきた高木大がクリアした。全員で戦う、燃えるような闘争心がひしひしと伝わってきた。

前半を1点リードで折り返した東京Vは、60分に追加点を奪う。相手のミスからマイボールにした高木善は、右サイドに開く高木大にパス。ポジションを前に移してリターンパスを受けた高木善は、ファーサイドで待ち構えるドウグラス・ヴィエイラにクロスを送った。落ち着いてボールをコントロールしたドウグラスは、ゴールのカバーに入った増川隆洋ごとシュートをねじ込んだ。

結局、東京Vは19本のシュートを浴びせられながら、札幌の反撃をセットプレーからの1点(77分。福森晃光の直接フリーキック)のみに抑えることに成功する。多くのピンチがあったが、田村、平智広を中心とする守備陣が身体を張ったおかげで、バーやポストが味方をしてくれた。とりわけ、田村の奮闘は胸に迫るものがあった。ボックス内、数メートル後ろにゴールを背負いながらも慌てず対処し、ルーズボールは大きくクリア。シンプルなプレーに徹した。

冨樫剛一監督の采配も冴えた。ゲーム序盤で特に危険だったのは、札幌の右サイド、マセードを起点とする攻撃だった。立て続けにアーリークロスを放り込まれ、都倉賢にドンピシャのタイミングで飛び込まれたら防ぎようがないと思われた。対面に位置する安在和樹は、中に絞る動きをしながら、常に外のマセードを気にし、やりづらそうにしていた。

そこで、冨樫監督は先手を打ち、大胆な手当てをしている。安在は言う。

「左のマセード選手には澤井(直人)、右の堀米(悠斗)選手には(安西)幸輝。相手のワイドにマークを付け、後ろは3枚で守る。勘違いしている人もいるんですけど、先制したから変えたんじゃない。大輔の得点が決まる前から、そうしようとしていました。ちょうど冨樫さんに呼ばれ、その話をしていたときに歓声が聞こえ、あ、入ったんだと。だから、僕はどんなゴールだったか、見てないんですよ」

(残り 2113文字/全文: 3771文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ