【無料記事】【フットボール・ブレス・ユー】第16回 手を振って別れた(17.1.22)
「最初は海外を考えたんですよ。自分にはそっちのほうが合っているかもしれないと思って」
と話すのは、北脇健慈。1月19日、Y.S.C.C.横浜への加入が発表された。
「最終的に移籍はまとまらなかったんですが、具体的に話が進んだのはオーストラリアとシンガポールのクラブでした。提示された条件はオーストラリアのほうが良かったですね。おおざっぱな感触では、仮にJ2の平均年俸が500万だとすれば、それよりは上です」
北脇に興味を示すクラブはJ2以下でいくつかあったという。そこで、自身のキャリアプランを真剣に考えた。
「おれ、今年で26になります。だいたいJリーガーの平均引退年齢がそこなんですね。あと1、2年で辞めたくはない。まだまだプレーしたいという気持ちが強かった。もっと若造だったら、アフリカでもどこでも飛んで行ったかもしれないです。当てがなかろうが、そのへんの虫を食って生きてやるさと」
生命力が強く、抜群にコミュニケーション力の高い北脇なら、それも可能だろうと思われる。が、サッカーでより上を目指すために、何がベストなのかを基準に置くと、候補は自ずと絞り込まれた。
「決め手になったのは、監督の樋口(靖洋)さんが評価してくれたことでした。わざわざ冨樫(剛一)さんに問い合わせて、おれのことを訊いてくれたらしいです。自分を必要としてくれるチームのために、力を尽くしたい。3年連続でリーグ最下位のチームですから簡単ではないでしょうが、少しでも向上できるように点を取って貢献したいです。また、日本でプレーすれば、ほかのクラブから評価されてステップアップする道も開ける。見ていてください。おれはここから這い上がっていきますから」
北脇は熱っぽく語った。受話器の向こうから、決然たる意志がひしひしと伝わってきた。