【SBG探偵局】file4『井林章が漫画のキャラクターに!?』(17.11.15)
file 4 『井林章が漫画のキャラクターに!?』
今日も何もなかった。たぶん明日も何も起こらない。ただメシを食い、寝るだけの日々。ここしばらく、自分は誰と口をきいただろう。コンビニの店員と新聞の集金、あとは飼っている文鳥か。あんな会話にもならない独り言を口をきいたことに含めれば、だが。
信号が青に変わる。人々が我先にと横断歩道を渡りだす。足早に歩くのは目的があるからだ。用事のない探偵は急ぐ理由がない。秋風が身にしみた。事務所に戻り、期待もせずにパソコンを開くとメールの着信。差出人は「片道3時間半の緑者」となっている。
こんにちは。いつもSBGの記事を楽しく拝見してます。
早速ですが調査の依頼です。『BE BLUES!~青になれ~』という漫画をご存知でしょうか?
週刊少年サンデーで連載中のサッカー漫画なのですが、この漫画に井林選手そっくりのキャラクターがいると僕の中で話題沸騰中です。そのキャラクターの名前は星倫吾。主人公・一条龍が通う武蒼高校のキャプテンです。
短髪、細目、DFで背番号3でキャプテン。ヴェルディサポとしてはどうしてもこのキャラクターが出てくる度に井林選手が重なってしまいます。笑ぜひ、井林選手本人やチームメイトはどう思うのか確かめて頂ければと思います。
よろしくお願いします。
探偵の目からキラリと光るものがこぼれ落ちる。涙だった。誰からも相手にされなかったこの1年を思う。これ以上ないほど無為な日々だった。
府中のキャバクラ、ナンバー4という微妙な嬢に200万ほどむしられた。酒が飲めないのに、何をどうやったらそうなるのか。名前の憶えていない女から「やっぱりあなたがきらいです」という葉書が唐突に届いた。自分という存在が急に不気味なものに思え、震えて眠った。少ない蓄えは跡形もなく消え、事務所の家賃の督促から逃げ回り、明るいうちは戻ることさえできない。
そうして探偵が息をひそめるように暮らしている間、数少ない知人友人は子どもをもうけ、住まいを構え、人生というものを着々と歩んでいる。自分だけが同じ場所から一歩も動いていない。そんな空っぽの日々が、ついに終わりを告げるのだ。
■助手はクリームソーダをすすりながら
こいつは大仕事になるぜ――。意気込む探偵は、助手(file 1に登場)に連絡を入れた。都内の喫茶店。きっと井林章が関係しているはずだと興奮を隠せない探偵に、助手はじっとりした目を向けてきた。
「いいですか。だいたいこういうのは誰かをモデルにした場合、ヒントを残すものです。わかりやすいところで、名前をモジるとか」
助手は、漫画やアニメに造詣が深い。クリームソーダをすすりながら、手元のスマホを素早く操作する。
「プロフィールを見ても、それらしきものは見当たらないですね。仮に井林選手がモデルになっているとすれば、『じつはアニメ好き』といった要素を加えるのでは」
たしかにそうだ。探偵は返す言葉がない。
「この武蒼高校は埼玉県。これがまだ広島ならね。ルックスは似ていますけど、ただの偶然。あなたの勘違い。舞い上がりすぎ」
このすっとこどっこいが、おとといきやがれと言わんばかりの助手であった。
■小学館に電話だ!
それでも可能性はゼロではないのではないか。あきらめきれない探偵は、版元の小学館に電話をかけ、週刊少年サンデー編集部につないでもらう。
すると、うまい具合に担当の編集者がいた。名を、鈴木翼。サッカー漫画界隈で、この名前は特別な意味を持つ。作者はさぞかしプレッシャーだろうなと探偵は余計なことを思った。ツバサではなく、ヨクと読むのがせめてもの救いか。
簡単に事情を説明し、ネタは上がってるぜ、さあどうだと迫った。
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