「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【SBGニュース】平本一樹、高木純平が現役引退を表明(17.12.9)

クラブを象徴するプレーヤーだった平本一樹。

東京ヴェルディを象徴するプレーヤーだった平本一樹。

■人間の本性をぶつけてくれた

「引退間際は、もっと葛藤があるかと思ったんですけどね。周りの先輩たちを見てきて、そうでしたから。今回、契約満了を告げられ、スパッと切り替えられました。ほかのチームでプレーすることは考えられなかった」

平本はさばさばした口調で言う。

「ああやってたくさんの人たちに送り出してもらい、ありがたい気持ちです。だけど、もうちょっと期待に応えたかったなあ。本心からそう思う。若い頃からサポーターに期待されていたのはわかっていましたから。自分はムラがありすぎた。ムラモトと呼ばれたくらいです。チャラついていたときはチャラモトと呼ばれたことも」

プロ生活18年で、通算413試合74得点の実績を残した。が、数字にどれほどの意味があるだろう。平本の回顧もまた、目に見えるものではなく感覚的な事柄だった。

「よく憶えているのはね、試合中のブーイングや試合前に自分の応援歌を飛ばされたこと。プレーしているとき、ベンチにいる森本(貴幸)の歌が聞こえてきたこともあった。そのときはムカつきましたよ。でも、自分と同じ目線で、同じ気持ちになって、応援し、愛してくれていたんだなと思います。あそこにあったのは、人間らしい、むき出しの本性みたいなもの。それを容赦なくぶつけてくれた。自分でもいまいち気持ちがノッてないなというときに、バチンッと。その頃に比べると、いまはだいぶやさしいですね」

緑のシャツをなびかせ、強引に突破を仕掛ける平本のドリブルはもう見られない。主をなくした25番が宙に漂う。この喪失感が、やがて深いものになるのを僕は覚悟する。

「たった一度の人生ですから、獲れるものは全部獲りにいきたい。学べるものは片っ端から勉強していくつもりです。ご存知のとおり、僕にサッカー以外の仕事ができるとはとても思えないので。指導者、強化の仕事、これからどんどんチャレンジしていきます」

差しあたって、平本は12日から日本サッカー協会 B級コーチ養成講習会に向かう予定だ。

◎平本一樹(ひらもと・かずき) 1981年、東京都生まれ。読売日本SCジュニアユース‐読売日本SCユース‐ヴェルディ川崎/東京ヴェルディ1969‐横浜FC‐東京V‐FC町田ゼルビア‐ヴァンフォーレ甲府‐東京V。育成組織からの生え抜きで、パワフルなドリブル突破は多くのファンを魅了。何かと率直すぎる人柄でも人気を集めた。

◎平本一樹(ひらもと・かずき) 1981年、東京都生まれ。読売日本SCジュニアユース‐読売日本SCユース‐ヴェルディ川崎/東京ヴェルディ1969‐横浜FC‐東京V‐FC町田ゼルビア‐ヴァンフォーレ甲府‐東京V。Jリーグ通算413試合74得点。育成組織からの生え抜きで、パワフルなドリブル突破は多くのファンを魅了。あけっぴろげすぎる人柄でも人気を集めた。

前のページ

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ