「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【フットボール・ブレス・ユー】第31回 澤井直人のリスタート(18.3.7)

第31回 澤井直人のリスタート

タッチライン際に立つ、背番号14が見えた。ついに、とうとう、ようやく――、どんな言い表し方も軽く感じられてしまう。長いブランクを経て、澤井直人が帰ってきた。

3月3日、J2第2節のヴァンフォーレ甲府戦、両者得点なく迎えた87分、澤井はアラン・ピニェイロとハイタッチを交わし、ピッチに足を踏み入れる。ロティーナ監督が切った最後の交代カードだった。アディショナルタイムを含めて、5、6分。ひと仕事できるかどうかの時間である。

そこで、澤井は自らチャンスをつくり出す。90分、今津佑太のトラップが大きくなったところ、すかさずボールをかっさらい、縦に向かう。ボックスに入り、3人に囲まれた澤井はそれでも前へ。クロスを上げようとしたが、ディフェンダーのブロックに阻まれた。

ブランクによる影響で、よく聞かれるのが充分な視野を得られないことだ。目の前の局面にフォーカスががっちり合い、周りが見えなくなる。あと少し気持ちに余裕があれば、一旦切り返し、サポートに入ってきた佐藤優平を使ったかもしれない。

久しぶりの真剣勝負の場を振り返り、澤井は言った。

「まずは、けがを治してくれた人、リハビリ中に支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱいです。勝点3が必要な状況だったので、自分の特長である動き出しの部分や、前にいる大きな選手をシンプルに使おうと意識しました」

(残り 1266文字/全文: 1849文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ