「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【SBGニュース】二川孝広が栃木SCへ(18.3.31)

二川孝広のプレーを見られる栃木SCのファンは果報者だ。

二川孝広のプレーを見られる栃木SCのファンは果報者だ。

■右足は輝きを失っていない

29日、東京ヴェルディは二川孝広が栃木SCに期限付き移籍することを発表した。期間は4月1日から2019年1月31日まで。二川はガンバ大阪からの期限付き移籍で東京Vに加入しており、栃木では東京V、G大阪との公式戦すべてに出場できない。

2016年6月、二川は東京Vのシャツに袖を通し、そのシーズンは20試合1得点。ロティーナ体制となった2017年は出番が減り、2試合の出場にとどまる。今季、出場はおろかベンチ入りさえなかった。

昨年11月29日、シーズン終了後に行われた流通経済大とのトレーニングマッチ。非公開練習が続いていたせいもあり、ふだんはなかなか見られない選手の様子が気になって、多摩市立陸上競技場に足を運んだ人はご記憶だろう。

そのゲーム、二川はどこまでも二川だった。井上潮音とのコンビネーションで狭いスペースを打開。止める、蹴る、動くを繰り返し、ゴールに迫っていく。

印象に刻まれているのは、ふたつのプレーだ。

左サイドでボールを受けた二川は、相手をするっとかわす。同時に、澤井直人がスピードを上げてボックスに侵入しようとしていた。二川は体勢を崩しており、ゴール前にボールを入れるだけで精一杯かと思われたが、ふわっとやわらかいセンタリング。あとは頭を合わせるだけという澤井のヘディングシュートは、ゴールの枠をわずかに逸れた。

ゴールほぼ正面でフリーとなった二川は、橋本英郎からのパスを受ける。正確なファーストタッチ、ルックアップ、振り抜かれる右足。ブレーキの利いたカーブシュートが、ゴール右隅に突き刺さった。この美技、シュートの軌道をゴール裏から目撃できた僕は幸福感でいっぱいになった。

東京Vでは戦術的なマッチングの問題で出場機会を失っていたが、その右足は輝きを失っておらず、二川がカネを取れる選手であることに変わりはない。

ロティーナ監督は言う。

「まず、フタの幸運を祈ります。プレーする機会が少ないなか、それでも常に笑顔で高い意欲を持ち、トレーニングではプロフェッショナルな姿勢を見せてくれました。彼がチームにもたらしてくれたものすべてに感謝したい」

30日、最後の囲み取材の場で、二川はこう語った。

「(移籍に関する話は)シーズン前から、そうしたほうがいいのではないかというクラブとの話し合いがありました。チームメイトには誰にも言ってなかったので、あ、ハシくん(橋本)にはちょっと漏れていた感じでしたけど、みんな昨日いきなり知ってびっくりしたんじゃないですか。いや、こういうのはちゃんと決まるまで話せないでしょ」

二川の場合、ちゃんと決まっても話すかどうか怪しいところであるが。ひとまず、週明けには栃木に単身移り住み、のちに家族を迎える予定だそうだ。

「移籍先がなかなか決まらない選手も多いなかで、話をいただけるのはありがたいこと。試合勘の面やクラブのことなどわからない部分もありますが、チャンスがあるならいこうと」

栃木では、移籍が発表になってから「まだ、こっちきいへんの?」と連絡を受けた大黒将志とのコンビが復活する。ディフェンスラインの裏に抜け出す大黒、そこに放たれる二川のキラーパス。ガンバ印のホットラインが今季のJ2を席巻することになれば愉快だ。

 

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