「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【新東京書簡】第四十一信『対峙する日本代表の現実と欧州戦術の理想。西野ジャパンはなぜ勝てるのか、その理由とチームの本質』後藤(18.6.27)

新東京書簡

第四十一信 対峙する日本代表の現実と欧州戦術の理想。西野ジャパンはなぜ勝てるのか、その理由とチームの本質

岡山で例の再試合を取材している海江田さんに、陣中見舞いがてら、気の利いた書簡を送ろうと思っていたら、なんやかやですっかり余裕がなくなり、ちょっと硬い文章になってしまった。読み物としてはおもしろくないかも。先に謝っとくね。ごめんなさい!

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戦前の予想を覆す快進撃に戦術好きのみなさん困惑

ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督の更迭を機に、それまでくすぶっていた議論が一気に白熱したよね。日本代表チームをピラミッドの頂点とする、日本サッカー全体の強化計画はどうなっているのか? 世界の最先端に遅れを取っているのではないか?

欧州基準で進んでいたチームづくり。その成果を本大会で検証することによって世界との差を測り、ひいては今後の強化計画を策定するためのデータがとれるのではないかと思っていた人々にとっては痛恨の極みだったと思う。オレ自身はハリルホジッチさんを好きなわけではないけれど、強化計画の一環に組み込まれたひとだなとは考えていたから、その点で大きな疑問符がついたのは、欧州を信奉する戦術ヲタさんたちと似たところがある。

でも、なんていうんですかね。最新の欧州戦術サイコーという自説の正しさを証明するために“日本負けろ”的な呪詛を吐く気にはまったくならないんだよね。むしろ無邪気に日本の快進撃を喜んでいる。セネガル相手に乾貴士が決めたゴール、その前にあった長友佑都のプレーに、青赤信者らしく大声を上げて喜んでしまった。

グループHで唯一の欧州チームであるポーランドが早々に敗退。最弱であるはずの日本が、南米の強豪コロンビアに勝ち、欧州の香りを十二分にまとったうえで身体能力も高いセネガルを圧倒しての引き分けを演じたとなると、海外サッカーファンや戦術クラスタの機嫌が悪くなるのも無理はない。でも現実を受け容れないと。

既存の理論を超えようとして新しい理論が創造されるわけだから、新しいもののなかに正しいものが含まれている可能性は高い。でも新しいと正しいはイコールではないし、新しいものは正しいものの一部分に過ぎないのだから、そこだけにフォーカスしても試合結果を正確にシミュレートできるとはかぎらない。まして「新しいから正しい、正しいから新しいほうが勝つ」と言って“世界アゲ、日本サゲ”をして、結果が裏目に出たらどうするのか。「勝ったほうが正しいんだろ? ならオレたちが正しい」と、長谷部誠にしろ本田圭佑にしろ、批判されてきた選手たちは、無言で示すんじゃないかな。

■日本サッカー史を体現した? 西野ジャパン

でもまあ、そうなったからと言って「ちくしょうめぇ!」と叫ぶより、むしろ日本がなぜ勝てるのかを考えたほうがいいような気がする。試合を観るかぎり西野ジャパンは、

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