「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【マッチレポート】2018 J1参入プレーオフ2回戦[A] 横浜FC戦『アディショナルタイムの雄渾』(18.12.3)

『父になる』2018.12.2

『熱狂のなか、父は』2018.12.2

2018年12月2日(日)
2018 J1参入プレーオフ2回戦 横浜FC vs 東京ヴェルディ
13:03キックオフ ニッパツ三ツ沢球技場
[入場者数]12,625人 [天候]曇、中風、気温12.3℃、湿度49%

横浜FC 0‐1 東京V
前半:0‐0
後半:0‐1
[得点]
0‐1 ドウグラス・ヴィエイラ(90+6分)

●東京Vスターティングメンバー
GK21 上福元直人
DF23 田村直也
DF3   井林章
DF5   平智広
DF4   香川勇気
MF20 井上潮音(49分 梶川)
MF33 渡辺皓太
MF16佐藤優平
FW24 奈良輪雄太(74分 ドウグラス)
FW11 林陵平
FW17 李栄直(49分 レアンドロ)
(ベンチメンバー:GK1柴崎貴広。DF2若狭大志、15林昇吾。MF38梶川諒太。FW7アラン・ピニェイロ、9ドウグラス・ヴィエイラ、10レアンドロ)

監督 ロティーナ

試合データなど(東京ヴェルディ オフィシャルサイト)

■正真正銘のラストチャンス

何かが起こりそうな気配は、まったくしなかった。

劇的なるものには何度も立ち会ってきたが、不首尾に終わったことのほうが断然多い。期待しすぎないのもまた、対象と長く付き合うコツだとか、ヘンに甘いことを考えると身過ぎ世過ぎにも差し支えるといった具合に、気持ちにストッパーをかける習慣がすっかり身についてしまっている。そんな自分をつまらなく思うが、昨日今日で形になったものではないからいまさらどうにもならない。

7分のアディショナルタイムは、早くも5分を回っていた。

グレーのユニフォーム、上福元直人がハーフウェーラインを駈け足で越えていく。コーナーキックのチャンスだった。少し前は上がることをベンチから制止されたが、どうやら正真正銘のラストチャンスということらしい。

キッカーは、佐藤優平。プレースキックの質の高さは、チームでこの人の右に出る者はいない。

この日、ニッパツ三ツ沢球技場にはメディアが大挙して訪れ、それぞれ指定の席が割り当てられていた。僕はメインスタンドの左側、つまり横浜FCサイドにいる。右コーナーキックは死角になっており、蹴るタイミングがつかめない。

気がつけば、白いものがゴール前に飛来し、そこから先は何が起こったのかわからなかった。

ボールは、どこにある。目で確かめるより先に、ぶわっと衝撃波がきた。風、ではなく、束になった空気。ビジター側のスタンドを埋め尽くす、緑の群れから発せられたものである。一瞬でスタジアムを駆け抜け、きっと横浜の街にも届いたのではないだろうか。

(残り 2624文字/全文: 3742文字)

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