【トピックス】検証ルポ『2018シーズン 緑の轍』第四章 破竹(18.12.27)
第四章 破竹
■人間の制御しがたい生理
2018シーズン、6位でJ1参入プレーオフに出場した東京ヴェルディは、レギュレーションのビハインドをはね除け、破竹の快進撃を見せる。
11月25日、プレーオフ1回戦、相手は5位の大宮アルディージャ。後半の途中、東京Vは内田達也を退場で欠き数的不利となりながら、71分、佐藤優平の絶妙なフリーキックに平智広が頭で合わせてゴールネットを揺らす。
1‐0で大宮を下し、ロティーナ監督を中心に広がる歓喜の輪に、ふだんは冷静沈着が服を着て歩いているような仕事人も我を忘れて飛び込んでいた。「勝敗に一喜一憂せず、シーズンが無事に終わったとき、初めて自分の責任を果たせたと達成感を覚える」との信条を持つ後藤雄一マネージャーだ。
「知り合いからは、あんなに興奮した様子を見せるなんて珍しいと言われましたね。まあ、劇的な勝利に加えて、場所もあったかな。埼玉で育った自分にとって、NACK5は思い入れの深いスタジアムでもあったので」(後藤)
続く12月2日のプレーオフ2回戦、レギュラーシーズン3位の横浜FC戦。両者得点なく迎えた後半アディショナルタイム、コーナーキックから上福元直人のヘディングシュートが炸裂し、こぼれ球をドウグラス・ヴィエイラがプッシュ。起死回生の一撃を生んだ上福元の上にベンチから飛び出してきたメンバーが覆い被さり、能登篤史アスレティックトレーナーもそのひとりだった。
のちに沖田政夫GKコーチは「彼、もともと野球をやってた人だから、逆転サヨナラホームランだと思ったんですよ」と笑いながら言い、まさかそんなことはあるまいと本人に訊ねると、「それ、ほんとです。あれで終わりだと思っちゃったんですよね。(大急ぎで引き戻しにきた運営担当の高馬新から)帰れ、帰れと言われ、なんだよ、おまえが帰れって思ったくらい。あとで、ごめんねと謝りました」。
驚きを軽々と通り越した歓天喜地の出来事に、常軌を逸した言動が出るのも無理はない。そのへんの人間の制御しがたい生理を鑑み、Jリーグからのお咎めはなしかと思われたが、さにあらず。この件で東京Vはきっちり厳重注意を受けている。直接的に叱責を受け、対応するのは高馬の仕事であり、試合運営に携わるスタッフは何かと損な役回りになることが多い。
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