「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【フットボール・ブレス・ユー】第40回 君たちはどんな景色を見るのか ~中央国際高校サッカー部~(19.5.8)

第40回 君たちはどんな景色を見るのか

その人は、いつも壁に向かってボールを蹴っていた。午前、練習取材のためランドにいくと、毎回のように姿を見かけた。浅黒く焼けた肌に、筋骨隆々の肉体。アスリートの身体つきだ。

だだっ広いグラウンドで、いつもひとりぼっち。沸々と何かをたぎらせ、真剣な表情でボールを蹴り続ける。孤独を引き受けているところに惹かれるものがあった。

やがて、東京ヴェルディとコーポレートパートナー契約を結ぶ、中央高等学院の biomサッカーコース(通信制高校サポート校。卒業と同時にサッカーを通じて「社会で生き抜く力」を身につけられる総合コースとして開設。東京Vはグラウンドの提供および育成・普及スタッフによる指導の面からサポート)に通う高校生だとわかった。高体連には中央国際高校として登録され、各種大会に出場する。

昨年、彼らを指導する東京V普及部の林崇裕(今年3月で監督を退任。以下、敬称略)に、あの熱血野郎は何者なのかと尋ねた。

「ああ、楓ですね。キーパーの小坂楓。あいつはプロを目指しているんです。それでグラウンドが空いている時間はいつも自主トレ。粗削りながら、いいものは持ってますよ」

すっかり面白がっている様子だ。通信制高校のサッカー部からプロを目指す。まるで漫画の設定だなあと僕は思う。いつか彼らのゲームに足を運んでみようと頭の隅に置き、5月2日、そのときがきた。

全国高校サッカーインターハイ(総体)東京予選西支部。1回戦、中央国際は国際基督教大を2‐1で下し、2回戦の明星戦もPK戦の末に突破。2日のブロック決勝に駒を進めた。相手は都立東大和である。

 

菅生学園学びの城グラウンドで行われた都立東大和戦。中央国際のスターティングメンバー。東京Vと同じくランドで練習し、ユニフォームも緑。親戚の子たちといった感覚を僕は持つ。

菅生学園学びの城グラウンドで行われた都立東大和戦。中央国際のスターティングメンバー。東京Vと同じくランドで練習し、ユニフォームも緑。親戚の子たちといった感覚を僕は持つ。

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