「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.37 ザ・ファンタスティック ~MF16 森田晃樹~(19.8.28)

永井サッカーの申し子のひとりだ。今季、東京ヴェルディユースから昇格したルーキーの森田晃樹。ボールを止める、蹴るの基礎技術の高さはもちろん、攻撃の多彩なアイデアや相手の逆を取る巧さはアカデミー時代から際立っていた。
プロ1年目、徐々に出場時間を伸ばし、J2第29節の水戸ホーリーホック戦ではついに初ゴールをマーク。軽妙なボールタッチをはじめ、プレーに遊び心を散りばめた“らしさ”を感じさせるシーンが増え、いよいよ大暴れの気配を漂わせている。

■あいつがパスを出したあと、次のプレーを見てみろ

東京ヴェルディの育成組織において、2000年生まれの世代は特別な意味を持つ。

各Jクラブはサッカースクールを通じて早くから才能のある子どもに目をつけ、新小4のセレクションを経てジュニアチームに加入となる流れが通例だった。ところが、青田買いが進み、関東では横浜F・マリノスが他に先駆けて新小3のセレクションを実施。一部のクラブはそれに追随する動きを見せる。

これに関し、東京Vのアカデミーの指導者の間では賛否あった。「年齢的に早すぎるのではないか」の声が出るのは当然だ。育成組織にも生存競争はあるが、社会の公器として地域貢献もクラブの存在理由のひとつであり、一度預かった選手は簡単に放り出せない。

クラブ内で協議を重ね、2008年、東京Vジュニアは新小3のセレクションに踏み切る。100名を優に超える応募があり、合格者はわずか3名。森田晃樹、荒木大輔(CSマリティモ U‐19)、綱島悠斗(国士舘大1年)が難関を突破した。

もし、セレクションが例年どおりに新小4からとなっていたら、どうだったか。森田は名古屋で生まれ、小学校入学と同時に一家は豊島区に転居した。千葉や埼玉も通える範囲に含まれ、多くの選択肢を手にしていたに違いない。

「セレクションはたまたま親が見つけてきてくれたんですが、全然乗り気ではなかったです。人がたくさん集まる場所は苦手だったし、試験みたいなのも好きじゃないし」(森田)

が、本気は出したのだろう。東京Vの指導者の見る眼は厳しく、ぬるいプレーにマルは付かない。

「受かったと聞いて、ああ、そうですかと。初めてのことだったので、よくわかっていなかった。セレクションは後にも先にもその一度きり。プロになりたいとか考えたことはなく、最初は練習場まで遠いなあと、いやいや通っていたと思います。帰る方向が大輔と一緒だったというのもあり、そのうちだんだん楽しくなっていったのかな」

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