「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【有料解除】【トピックス】『SBGヒーロー2019』総評・後編(19.12.12)

最終節でスタメンの座をつかんだ藤田譲瑠チマ。この経験は来季に生きるはずだ。

最終節でスタメンの座をつかんだ藤田譲瑠チマ。この経験は来季に生きるはずだ。

■藤田譲瑠チマがヒーローにふさわしい理由

海江田「4試合しか出ていない藤田譲瑠チマが5票獲得しているんです。最終節の岐阜戦の仕事ぶりは際立っていたけど、あれは相手が相手というのもあり」

芥川「あの岐阜はだいぶ酷かったので、評価しづらいものが。翌日のトレーニングマッチでは、中盤の底での仕事がうまくいかず、途中でポジションを移されていましたね」

海江田「うん、まあ、あの若さで安定していたら、小さくまとまっちゃう心配が出てくる。1位が2票も入っていて、そのひとりが情熱たっぷりのコメントを寄せてくれました。もうね、笑うよ。書き出しからして違う。エッセイ書いてきやがった。『SBGヒーロー2019』のコメント大賞はこの人です!」

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【MF40藤田譲瑠チマ】

「そうだ、山本理仁を観にいこうと思い立ちユースの試合に赴いた昨年、ピッチの外で声を出している少年がいるなと気が付いた。見たところハーフの子だったのでなるほどこれが藤田君か、と僕はそのとき初めて藤田譲瑠チマ君のことを認識した。2年生だったが、当時は既に山本選手はもちろん、松橋君馬場君石浦君、山下君や遠藤君も試合に出ていたころだったので、あぁ彼は出遅れてるな大学に行くのかなとぼんやりとそのときは思っていた。
そうだ、阿野真拓を観にいこうと今年も思い立ちユースの試合に赴くと、あの日見たハーフの少年が中盤で先発出場していた。今年初めのころからセンターバックなどで出ていたことは聞いていたので、どれどんな選手なんだろかと楽しみに試合を観始めた。そして試合後、僕のぼんやりとした気持ちは完全に吹き飛んでいた。彼が完全に中盤を掌握していたからだ。奪い取り、運び、展開し、声でチームを動かす。ついに理想のアンカーがユースから出てきた! 興奮とともに「最大の発見」と僕は書き記した。
僕のような素人でも一目でわかる輝きだ。プロが見逃すわけもない。藤田君はこの1年で評価を驚異的に高め、トップチーム昇格を勝ち取り、U-17W杯で世界と戦い、最後にはJ2のピッチで90分戦い抜いた。
もちろん、トップチームで何かを成し遂げたわけではない、まだまだこれからの選手であることは理解している。だから、これは期待料的選考と捉えられるかもしれないこともわかっている。はっきりとしておきたいが、僕が藤田君を今年の東京ヴェルディのヒーローと考えているのは、彼の未来への先行投資をしたいわけではない。
2019年のこの1年間の間に藤田君が成し遂げてきたことが与えてくれるものは大きい。例えばユースで今試合に出ていない2年生や1年生にとって、彼の駆け上がっていく姿はどれほどまばゆいものか。そう、ユースやジュニアユースやジュニアの選手には、真摯に取り組み続ければ例え今難しい時期であっても1年、いや半年でも自分のいる世界は変わることがある、と激励を。そしてこれから永井秀樹監督の下で新しいものに取り組むトップチームには大丈夫、取り組み続ければなんだって成し遂げられる、と勇気を。藤田君が今年演じた躍進劇は、東京ヴェルディサッカーチーム、トップからジュニアに至るまでの多くの人々に成長の可能性を示した。それが、藤田君を今年の東京ヴェルディのヒーローと呼ぶにふさわしいと考えた理由である」(ふかば)

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