「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】シリーズ新加入〈1〉 MF15 中野雅臣(20.1.14)

シリーズ新加入〈1〉 MF15 中野雅臣

今季の加入第一報は、昨年11月30日、FC今治に期限付き移籍していた中野雅臣の復帰だった。

ボールを自在に操る技術、高精度の左足のキック、なめらかに加速するドリブル、豊かなアイデア。育成年代から将来を嘱望された世代屈指のタレントだ。東京ヴェルディジュニアユースの頃から、同期の三竿健斗(鹿島アントラーズ)とともに「あのふたりは間違いない」と断言する声がクラブの内外から聞こえた。

2014年、2種登録されJリーグデビュー。2015年、トップに昇格。年代別代表にも名を連ね順調に歩みを進めたが、以降、中野を待ち受けるのは度重なる苦難だった。

中野と接する指導者は、例外なくその能力に一目置いた。よって、チャンスは与えられる。だが、それをことごとく生かせない。闘争心が表出しない気性のおとなしさに加え、めぐり合わせの不運もあった。

2017年7月、中野は出場機会を求めてFC今治に期限付き移籍。2018年3月、右足アキレス腱断裂の重傷を負い、その年を丸々リハビリに費やした。プロでの6シーズン、定位置を獲得した実績はなく、初ゴールの喜びすらまだ味わっていない。

中野は言う。

「昨年は故障から復帰し、途中出場がほとんどでしたが、1年間しっかりやることができました。今治はクロスによる攻撃が軸だったため、左サイドからボールを入れていく仕事が中心でしたね。ただ、自分のプレースタイルを生かしたポジションを確立するには至りませんでした」

今季、2年半ぶりに緑のシャツに袖を通す。春には24歳となり、もう若手とは言えない年頃だ。

「永井さんのサッカーは、やり方や目的がはっきりしている。目指すレベルはかなり高いところにあり、そう簡単ではないでしょうが、そこを目指して自分もチームに貢献したいです」

勝負の世界で生きる人にとって、論理や筋道の範疇を超える星回りに恵まれることは重要だ。これまで肝心なところでツキに見放されてきた中野だが、幸運がひとつ舞い込んだ。U‐15からU‐17日本代表の時期の監督であり、今治でも一緒に仕事をした吉武博文コーチの就任である。

「初めて見たときからフル代表を意識させられる素材でした。あの上背があり、左利きで技術がある。けがが多いのが難点でしたね。当然、期待は大きい」(吉武コーチ)

我慢や歯噛みは、とっくに一生分はしただろう。溜まりに溜まったものを、ドッカン爆発させてほしい。

 

◎中野雅臣(なかの・まさおみ)
1996年4月9日、埼玉県生まれ。181センチ、68キロ。東京ヴェルディユース‐東京ヴェルディ‐FC今治‐東京V。Jリーグ通算24試合0得点(JFL通算18試合0得点)。パス、ドリブル、シュート、アタッカーとしての才は疑う余地なし。誰がなんと言おうと、中野はいい選手だ。

 

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