「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【SBGニュース】新型コロナウイルスの影響により、Jリーグの再延期が決定。羽生英之社長「無観客試合の落としどころは避けてほしい」(20.3.10)

1月20日の新体制発表で壇上に立つ羽生英之社長。このときすでに武漢肺炎、新型コロナウイルスは各メディアで報じられていたが、リーグを中断するまで影響が大きくなるとは考えていなかっただろう。

1月20日の新体制発表会見で壇上に立つ、東京ヴェルディの羽生英之社長。このときすでに武漢肺炎、新型コロナウイルスは各メディアで報じられていたが、リーグを中断するまで影響が拡大するとは想像していなかっただろう。

■クラブの受ける経済的な打撃

9日、Jリーグの村井満チェアマンが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って延期している公式戦について、3月末まで開催を見合わせると発表した。当面は4月3日の再開を目指し、一致団結して尽力していくことになる。

これによりクラブはどのような影響を受けるのか。10日、東京ヴェルディの羽生英之社長がSBGの取材に応じた。

「4月に再開できれば、日程的には現在の枠組みでシーズンを消化することが可能です。ただし、クラブによって特殊な事情もあります。J2は3月の6節分が延期となり、そのうち自分たちはホームゲームが5試合もある。これをすべて平日開催にはめ込んでいくと、クラブの受ける経済的な打撃は小さくない」

週末に開催するホームゲームと比べ、平日では収益が2割から3割減となる。トータルで1試合分の実入りが軽く吹き飛ぶ計算だ。

「レギュレーションの変更も視野に入れて、対処していく必要があるのでは。たとえば、今季は特別措置としてJ1参入プレーオフのシステムを変え、J1の16位とJ2の3位による一発勝負の入れ替え戦にすれば、それだけで2週分の余裕ができます。あるいは12月いっぱいまで期間を延ばす、東京五輪による中断期間を短縮するといった案も。天皇杯も絡んできますので日程の調整は複雑になりますが、よりベターなやり方はあるはずです」

上記の案のうち、五輪期間中に延期分のゲームを消化するというプランは、実務担当レベルですでに話し合われている。だが、これには東京ならではの困難がある。

東京Vは運営担当者が東奔西走し、手当たり次第に首都圏近郊のスタジアムに打診したが、どこも週末の予定はぎっしりでけんもほろろに断られている。現状、代替会場を用意できる目処は立っていない。

範囲を広げて遠隔地での開催ならば可能性は高まるだろうが、肝心の収益が見込めないうえ、現場に余計な負担を強いることになり、平日を避けた意味がなくなる。

「東京五輪の期間にアウェーゲームを行う、またはほかのクラブから会場を借り受ける問題をクリアするか。この点の難しさはFC東京も同じですね」

東京Vにおいては、3月分の売上げが入ってこないことですぐさま資金繰りが悪化する状況ではないとのこと。とはいえ、どのクラブもキャシュフローに余裕を持たせて運営しているわけではない。

「補填の仕方はさまざまな手段があり、そこは差し迫ったテーマではないと思います。こういった危急の事態に備え、Jリーグの積立金もあるわけですから、まずは、リーグ戦の再開に向けて何ができるか。この状況に際し、自分たちのことばかりを主張するわけにはいかない。今後のためにも無観客試合の落としどころは避けてほしい、というのが私の考えです」

以上、羽生社長はクラブの経営トップとしての考えを村井チェアマンに伝えており、12日のJリーグ実行委員会で善後策が話し合われることになる。

プレイヤーズファーストの観点からは、極度の過密日程は避けられるのが望ましい。プロの興行である以上、観客の存在はなくてはならないものだが、かといってクラブを支えるサポーターを危険にさらす事態は避けたい。アクシデントによるダメージはできるだけ平等に負担すべきで、特定のクラブにしわ寄せがいくのも回避したい。

避けたいものだらけで、八方丸く収まる着地点は見つけられそうもなく、どこかには目をつぶるしかないだろう。はたして、双方歩み寄って、どのような妥結をみるか。

 

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