「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】集客目標『BEYOND 7,000』は物語の共有(20.4.9)

東京ヴェルディファンデベロップメント部シニアディレクターの鈴木雄大さん。どんなにしんどい状況でも、笑っといたほうが免疫力は上がる、らしい!

集客作戦を仕掛ける、東京ヴェルディファンデベロップメント部シニアディレクターの鈴木雄大さん。どんなにしんどい状況でも、笑っといたほうが免疫力は高まる、らしい。

■将来の展望を踏まえた今季の集客目標

8日、Jリーグは25日から5月27日までの公式戦延期を正式に発表した。5月30日以降の開催は未定となっており、見通しのはっきりしない状況が続いている。

これにより、クラブサイドは新たな対応を迫られることになる。

「リモートワークに移行し、クラブハウスにいくことはほぼないです。特に週末は仕事という生活をずっとしてきたので、家にいるのが妙な感じですね。あれ、ここにいていいのかな、と落ち着かない気分になります」

そう語るのは、東京ヴェルディ ファンデベロップメント部シニアディレクターの鈴木雄大さん。2015年の入社以来、主に営業畑を歩んできたが、今春からマーケティング部門のかじ取り役を担うことになった。

3月28日、東京Vはオフィシャルサイトで将来の展望を踏まえた今季の目標を明らかにしている。その中身は従来の姿勢とは異なる、画期性に富んだものだ。

2020シーズンの集客に関する目標『BEYOND 7,000』の発表と皆様へのお願い

「年末年始の時期からファンデベロップメント部で集まり、概要を固めてきました。非常にやる気があり、アクティブなメンバーが揃っているおかげです。2月16日の『東京ヴェルディラウンドテーブル2020』で参加者に伝え、本当はもっと早いタイミングでオープンにしたかったんですが、諸事情あって3月下旬の発表となりました」

7,000という数字が絶妙だ。現実味があり、がんばろうと思える目標設定である。

「(二度目のJ2降格となった)2009シーズン以降の入場者数は、ほとんどが5,000~6,000の間を行き来しています。気持ちの部分だけなら、他クラブの事例に見られるようなキリのいい1万人を目標にしたいですよ。でもそれは、残念ながらいまのクラブの現状にはそぐわない。まずはしっかりと土台をつくり、その先の8,000、1万と上を目指せる態勢を整えていきたい。過去11年、超えたことがない7,000というラインも、ポイントごとに上積みしていかなければ達成がかなり難しい数字です」

そのため、シーズンチケット会員、ファンクラブ会員、キッズパス会員、ホームタウンデー招待/優待、小学生招待、JリーグIDお気に入り登録者の6項目において、現状と目標数値を明らかにしている。

「数字の“見える化”は意識した部分。サポーターと情報を共有することで、他人事ではなく自分に関係ある事柄として捉える人を増やしていきたい」

このようにプロジェクトをスタートさせたまではいいが、あいにく新型コロナウイルスの感染拡大によりJリーグは中断。東京Vはアウェーゲームを1試合消化しただけで、評判のよかった新ユニフォームのホームお披露目さえできていない。

延期が繰り返されるごとに再調整となり、新たに感染防止も考慮していかなければならないスタッフの苦労は察するに余りある。

「3月の試合で予定していたプロモーションを4月に動かしたらまた延期に。事情が事情ですから仕方がないんですが、PDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)のサイクルを回していけないのがつらいところですね」

Jリーグの再開すら危ぶまれており、集客目標の達成どころではないのが実状である。『BEYOND 7,000』は2年越しのプロジェクトになるだろう。

僕が希望するのは、やりっぱなしの打ち上げ花火で終わらず、仮に未達成に終わったとすれば何が足りなかったのか、今後注力すべきポイントの「見える化」だ。

「これまでのクラブの取り組みから、やりっぱなしでは意味がないと言われるのはよくわかっています。今年の厳しい状況では、周りの人たちから笑われちゃう結果になるかもしれませんが、シーズン終了後に報告と分析はきちんと出すつもりです。過程を含め、サポーターの皆さんと共有していきたいので。『BEYOND 7,000』はクラブの力だけではどうにもならないんです。できるだけ多くの方々が協力したい、一緒に前に進みたいと思ってもらうのが大事になる」

つまり、ともに壁を乗り越えていく物語の共有、参加キャストの募集だ。この未曾有の危機を経てとなれば、達成に至ったときの喜びはひとしおに違いない。

サッカーのある日常が遠く感じられるが、いつかその日は帰ってくる。プロジェクトが本格的に動き出したとき、鈴木さんにはあらためてご登場願うとしよう。

 

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