「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】連載『中根玄暉 新米サッカーコーチの日常』〈6〉(20.7.21)

中根玄暉監督による、試合前の作戦タイム。

中根玄暉監督による、試合前の作戦タイム。

■簡単にミスはできないという空気

7月11日(土)
ひと笑い取れる人はすごい。Ash稲田堤店には9年お世話になっている。カットが始まるや、聞き手に回る。話し上手ではないので。美容師と客の会話のパスが逆転する。少々の沈黙タイム。懸命に話ネタを考える。聞き手の方が楽だが、指導者は両面がバランスよくあるべき。選手を惹きつける、ユーモア溢れる言葉や表現が時として必要になる。小学生を目の前にしても、どうも堅い話で練習を締めてしまう。即興で笑いが取れる人はそう多くないだろう。相手の反応を想像した準備を怠っているのかもしれない。

7月12日(日)
その様相は宝探しのよう。俺の背番号が入ったユニフォームはどこだ、と言わんばかりにケースを漁るU-10の選手たち。先頭に立ち、指揮を執るのは5ヵ月ぶりとなる。開始30秒。ショッキングな失点を食らった。試合前の僕のマネジメントが招いたもの。選手の緊張をほどけず、バタバタな状態でゲームに入った。0-6になった。自分が思い描いていた理想を選手に当てはめて入った試合。ここに大きな原因があることを、言葉にせずとも彼らがピッチで教えてくれた。ハーフタイムを挟み、一人ひとりがエネルギーを出し始めた。スイッチが入った。いつも、僕が教えているようで、彼らから僕が教わっている。

7月13日(月)
「コーチはオリジナルじゃないと」師からの言。連日の長雨は厄介だ。今日もその影響を受け、チーム活動の一部が中止となった。星乃珈琲店はこんな時の行きつけだ。滞在した3時間、オリジナルトレーニングメニューの考案に充てたが、何一つ思い浮かばない。時間だけが過ぎる。これまで自ら作り出したトレーニングはない。経験してきたものや転がっているものを拾っているだけ。検索をかける。「アイデアの出し方」西野亮廣さんがそっくりそのままのテーマをyoutubeで配信していた。なるほど。転がっているものから自分流にするみたい。

7月15日(水)
簡単にミスはできないという空気。ヴェルディの紅白戦が思い出される。僕の選手人生の大半はヴェルディの育成組織だったので、その物差しでしか測れないが、今、緑山SC U-15にはこの空気がピッチに存在している。チームが成長する上で必ずあるべきものではないか。緊張感漂うピッチを楽しんでいる者は堂々としている。降りしきる雨の中、熱を帯びた紅白戦であった。

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