「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】特集『新マスコット リヴェルン誕生秘話』前編(20.8.10)

人工芝グラウンドでポーズを決めるリヴェルン。これからよろしく。   ©TOKYO VERDY

人工芝グラウンドでポーズを決めるリヴェルン。これからよろしく。   ©TOKYO VERDY

特集『新マスコット リヴェルン誕生秘話』前編

 

5月4日、みどりの日。東京ヴェルディの新マスコットであるリヴェルンが誕生した。かわいい、ユニークとけっこうな評判である。
この度、クラブが新たな顔を必要とした理由。そして、先々にはどのような戦略があるのか。制作プロジェクトに携わった関係者の証言を集め、リヴェルンが生まれるまでの日々を追った。

 

■子どもから泣かれるヴェルディ君

東京ヴェルディが次の時代を切り拓くために、新たなアイコンとなるマスコットの開発に着手すべきではないのか。

近年、クラブ内でそういった意見がぽつぽつと出るようになり、2019年10月、ついにプロジェクトは動き始めた。

主導したのは、東京Vファンデベロップメント部である。同部のシニアディレクターを務める鈴木雄大さんは言う。

「長く貢献してくれているヴェルディ君は充分に知名度があり、サポーターから愛されているマスコットだと認識しています。とはいうものの、毎年あるマスコット総選挙の順位はかなり低く、今後を考えると仲間を加えて新しいストーリーを一緒に描いていったほうがいいのではないか、という話になったんですね。そこで、まずは現状の課題を洗い出すことから始めています」

ヴェルディ君に関しては、さまざまな場面におけるデータが豊富に蓄積されていた。たとえば、ホームタウン活動の際、抱きついてくる子どもはまれで、距離を取って警戒される、怖がられるのは日常茶飯事。時には、泣かれることさえあった。

マスコットに付き添い、その光景を目の当たりにする鈴木さんたちもつらいが、着ぐるみの中の人はさぞかし切ない思いをしてきたことだろう。地域の人々との触れ合いを通じ、クラブの存在をアピールすることが目的なのに、これでは狙った効果を上げられるはずもない。

「外見、特にくちばしの長さが恐怖心を湧き上がらせるのか。やはり、ホームタウンでの立ち位置を確立するうえで、子どもから親しまれる、愛されるというのはマスコットにとって重要な要素です」(鈴木さん)

同じくファンデベロップメント部の菊地優斗さんは、東京Vのコーポレートパートナーである株式会社アカツキからの出向社員であり、以前はスタジアムで応援するサポーターのひとりだった。

「チームのことがずっと好きでしたから、ヴェルディ君にも愛着は持っていました。ただ、人気のあるヴィヴィくん(V・ファーレン長崎)やグランパスくん(名古屋グランパス)などと比較し、強みは少ないなとも感じていましたね。実際、自分がホームタウン活動の仕事をする際、稲城市のマスコット、なしのすけとセットでのイベントがあったんです。かわいらしくデフォルメされているなしのすけには子どもたちが抱きつくけれど、ヴェルディ君には近寄りもしない。フォルムが人っぽすぎるせいなのか、このあたりは弱さが目立ちました。そういった長所短所の分析を言語化し、新マスコットに落とし込んでいこう、と」

そう語る菊地さんには、アカツキの企業力を活かせる、もってこいの案件だという自負もあった。

「現在のアカツキはゲームを軸とした、IPプロデュースカンパニー(Intellectual Property=知的財産)を目指しています。新マスコットを生み出すことはIPプロデュースの領域であり、まさにアカツキがピンポイントでやろうとしていることです」

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