「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】特集『新マスコット リヴェルン誕生秘話』前編(20.8.10)

リヴェルンには、まだ明かされていないストーリーが詰まっている。   ©TOKYO VERDY

リヴェルンには、まだ明かされていないストーリーが詰まっている。   ©TOKYO VERDY

■アカツキが得意とするIPプロデュース

プロジェクトの立ち上げには、当時アカツキの執行役員で東京Vの取締役を兼任していた梅本大介さん(現東京Vゼネラルマネージャー)が一役買った。アカツキの事業部に話を通し、ゲーム制作プロデューサーの岩野弘明をプロジェクトに引き入れる。同時に、キャラクタービジネスから発生した収益の一部を、アカツキに還元する共同事業モデルの設計にチャレンジした。

梅本GMはこう語る。

「アカツキが得意としているIPプロデュースをお手伝いすることで、面白いキャラクターをつくることができるのではないかと。ただ、単にスポンサーがボランティアのお手伝いをするということではなく、クラブとともに歩み、より多くの機会やメリットをスポンサーに還元するモデルケースになるように、ビジネスモデル化を検討しました。アカツキの立場から見ると、この事業そのものが利益をもたらすことはほとんどありません。正直、いまのところは赤字です。スポンサードを通じて新たな事業機会の可能性を得られるのは、スポンサーを続ける価値のひとつ。一方、クラブの立場からすると、協業スキームを組めることは、スポンサーに対する価値提供の取り組みと言えます」

岩野さんはゲーム業界での実績が豊富で、多くのファンに愛されるヒット作を手掛けてきた。独創性のあるキャラクターデザインや世界観をつくることに定評があり、ゲームを中心にさまざまなエンタメコンテンツを世に送り出す、名うてのプロデューサーだ。

「サッカーは好きですので、ぜひやらせてくださいとプロジェクトへの参加を決めました。思えば、自分が小学校高学年あたりでJリーグが開幕したんです。子ども心にワクワクして、体育の時間はカズだラモスだと盛り上がったのを憶えていますね。そのときのヴェルディは飛び抜けた人気で、僕も応援していたチームでした」(岩野さん)

ゼロからイチへ、新しいものが生み出されていく過程に興味があった。ゲームのキャラクターデザインとJクラブのマスコットづくり。両者の作業の流れにはどのような違いがあるのだろうか。

「ゲームでオリジナルの作品をつくる場合は、まずはテーマを決めることから始まるのが一般的です。何を楽しむものなのか、ということですね。そこから世界設定やシナリオをつくる。過程のなかで、キャラクターが形づくられていきます。一方、マスコットはキャラありきなのでつくり方が異なります。そのマスコットがファンにとってどんな存在でありたいか、どのような背景を持っているのかということから考えます。そういった設定を元にデザインに落とし込んでいきます。どのデザイナーさんにオファーするのか、といったその後の流れに関してはゲームと変わりません」

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