「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【トピックス】特集『ルーツ探訪 阿野真拓を生んだヴェルディS.S.小山』前編(20.10.7)

阿野真拓の後輩たちが、雑草だらけのグラウンドを駆けている。

阿野真拓の後輩たちが、雑草だらけのグラウンドを駆けている。

特集『ルーツ探訪 阿野真拓を生んだヴェルディS.S.小山』前編

 

今季、東京ヴェルディユースから超飛び級でトップに昇格し、弱冠16歳でプロデビューを果たした阿野真拓。彼の育ったヴェルディS.S.小山とは、どのような街クラブなのか。リオネル・メッシを彷彿とさせる左利きのドリブラーはいかにして生まれたのか。
盛夏の日、東京から電車に揺られて1時間半、栃木県小山市を訪ねた。

 

■あれが阿野真拓だぞ

そこは、ピッチの形をしていない、ただの原っぱだった。

「こんなところで練習をしているのかとびっくりしたでしょ?」

そう言って笑うのは、ヴェルディS.S.小山(以下、小山)の石田浩之監督だ。

東京ヴェルディは全国に公認支部を有しており、栃木県の小山はそのひとつ。ほかにヴェルディS.S.岩手、ヴェルディS.S.レスチ(東京都・千葉県)、ヴェルディS.S.アジュント(東京都)、ヴェルディS.S.相模原(神奈川県)。準支部のWings(千葉県)、FCヴァーデュア三島(静岡県)、ウイングスS.C.(栃木県)がある。なお、河野広貴や山本理仁、南秀仁(モンテディオ山形)を輩出した相模原については、こちらのインタビューに詳しい。

小山の主な出身選手には、ベガルタ仙台で長く活躍する富田晋伍、小島秀仁(ジェフユナイテッド千葉)、高木和徹(V・ファーレン長崎)などがいる。今年、そこに新たな名前が加わった。東京ヴェルディユースから通常より2年早い超飛び級でトップに昇格し、8月12日のJ2第11節、アビスパ福岡戦でJリーグデビューを果たした阿野真拓だ。

夕刻、練習が始まる時間が近づくと、緑のシャツを着た子どもたちがぞろぞろ集まってきた。この日は小学生を対象としたサッカースクールである。

時は、新型コロナウイルス禍。練習前の体温チェックは欠かせない。申告し終えた順に、ボールを蹴って元気いっぱいに駆けだしていく。

石田を支えるのは、遠藤省太コーチと中島耕平コーチ。大勢のスクール生からジュニアユースまで、わずか3人でクラブを切り盛りしている。

「本当に大丈夫か? うちでサッカーを教えるのは大変だぞ。環境面もまだまだだし、とにかくめちゃくちゃ忙しい」という石田の脅しにもめげなかった若き指導者だ。

遠藤コーチは阿野の印象についてこう語る。

「これまで見た同年代の選手とはボールタッチやドリブルが全然違いましたね。対戦相手にもその名は轟いていて、Jクラブと練習試合をするときは『あれが阿野真拓だぞ。気をつけろ』と向こうの選手たちから聞こえたものです」

 

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