「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【フットボール・ブレス・ユー】第50回 新たな船出の日(21.1.24)

第50回 新たな船出の日

新体制発表会見――。

新しいシーズンに向けて、選手、コーチングスタッフはもちろん、ホームタウンの首長、スポンサー企業などが一堂に会し、クラブスタッフ総出で盛り上げる晴れの舞台だ。

取材する側も気持ちを引き締めて臨み、この日だけはTPOをわきまえてジャケットくらい着たほうがいいよな、とあらたまった気分になる。

東京ヴェルディは1月23日、2021シーズンの新体制発表会見を行った。時節柄、オンラインでの開催である。必要最低限、ミニマムな規模であり、こちらは YouTube Live を眺めているだけで味も素っ気もない。

第1部の事業ビジョン発表、昨年末、経営トップに就いた中村考昭代表取締役社長がモニターに映る。

経営難は脱したこと、選手とともに歩み、成長していくクラブでありたいということ、クラブとつながりを持つさまざまな人々との関係性を大切にしていくこと。中村社長は時折、テーブルのメモに目線を落としながら訥々と語った。

そこに、内面から発せられた肉声がどれほどあったか。実現できたらいいといった願望は含まれるに違いない。しかし、熱量を感じ取るのは難しい。言葉を厚く覆っていたのは「体裁」ということになろう。

また、見えない誰かに向かって言葉を発する話者が、孤独である空気感も否応なく伝わってきた。

批判的に聞こえるかもしれないが、そのつもりはない。おそらく中村社長もそのあたりの自覚はあり、そうならざるを得ない事情がある。

この度、ゼビオホールディングス株式会社が入念に準備した結果、東京Vの経営権を取得したのであれば違ったはずだが、今回のケースは突発的な事例に近い。短い準備期間で考えた程度では、表層をつるっとなでるようなアイデアしかひねり出せないのは無理からぬところだ。

今後、クラブ内部は人の動きが出てきて、小さな混乱は当分続くだろう。

その過程で前経営陣のガバナンスの問題、特に人事に関しては正常化の方向で進むと見ている。そんなことより大半の読者はJ1昇格に向けてのバックアップを期待するだろうが、組織が正常に機能しなければチームの結果は望むべくもない。

総力戦を勝ち抜くには、強固な土台が要る。

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