「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【インタビュー】『東京ヴェルディの明日はどっちだ』中村考昭代表取締役社長に訊く・後編(21.8.25)

■意思決定のプロセス、お金の使い方を是正

――現在はゼビオが東京Vの責任企業を担っています。将来の経営の形はどのようにイメージしていますか?
「たとえば、トヨタ自動車の株主構成どうなっているかご存知ですか?」

――わかりません。
「上場企業ですので、多くの株主で構成されており、通常は特定の誰が株主なのかはメインテーマにならない。トヨタという企業が社会にどう貢献しているのか、トヨタが社会から求められているものこそが重要なのです。どうもスポーツの世界では責任企業だとか株主構成の話にばかりなりがちですね。一部報道で、ゼビオグループが東京Vの株を売り払うのではないかと偏った記事が出て、非常に残念でした。社会にある組織体として、どういった価値をもたらせるか。それ以上に大事なことがあるでしょうか? 東京Vもそれは同じだと思います。そうなって初めて、スポーツが本当の意味で社会から求められ、重要な位置を占める構造になるのでは。もしかすると日本のスポーツビジネスがまだ発展途上で、サッカーに実業団的な発想が残っているのかもしれません。いえ、一概に実業団の形態が悪いわけではないんです。日本的な経営手法のなかで編み出されたすばらしいやり方で、世の中で広く認知されていますし、スポーツの競技種別によっては実業団形式のほうが適切な場合もある。ただ、サッカーという極めてグローバルに市場が開かれたメガスポーツの場合には、実業団的な経営手法では経営は難しいと考えています。今後、資本構成が変わるか変わらないか、両方の可能性があります。それより東京Vがしっかりした経営組織体になっていくことが最優先。私は経営者として実現に向けて注力していきます」

――一部報道といえば、春頃に出た『週刊文春』と『週刊新潮』はだいぶ細かいところまで調べてましたね。
「そうですね。どこから入手した情報なのか、比較的詳細な記述がありました」

――過剰な必要経費の状態化に関しては、誰も指摘できない組織にしてしまった周りの責任もある。
「現在、意思決定のプロセスやお金の使い方はゼビオグループの基準、つまり上場企業のやり方に変わりました」

――きっちり改善されたと。
「冠婚葬祭をはじめ、社会通念上、必要な経費は出てきます。ただ、私は接待を目的とする飲み会などはいかないスタンス。そういった経費の使い方はゼロです」

――昨年12月25日、新経営陣の発足と同時にオフィシャルサイトに声明文が出ました。あそこに記載された経営陣交代の理由のひとつ「複数の不透明な商取引」の決着は?
「まだ公の場でお話しできる段階ではありません。申し訳ありませんが、ご理解ください」

――チームを強化し、サポーターの観戦環境を向上させていくには資金が必要です。近隣にライバルがひしめくなか、独自の魅力をどのように打ち出していきますか?
「9月にWEリーグが開幕し、日テレ・東京ヴェルディベレーザがホームタウンとして連携を深めつつある北区と板橋区だけでも約90万人の人口があります。それより人口の少ないエリアで活動するJクラブは少なくありません。われわれ東京ヴェルディは東京都下で堅実に存在感をアピールして集客できれば、チームを成り立たせられることは可能です。多くの人口や法人が集中する東京は可能性に満ちています。奇をてらったり、特殊なことをやるより前に、堅実に地道にやるべきことをやっていく。コツコツ積み上げていければ、100億円規模のクラブに充分なれるはずです」

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