「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【トピックス】検証ルポ『2021シーズン 緑の轍』第一章 宙に漂う言葉(21.12.21)

選手たちに発破をかけ、強くプッシュする永井秀樹監督。

選手たちに発破をかけ、強くプッシュする永井秀樹監督。

第一章 宙に漂う言葉

■初っ端からゴールを決めた佐藤凌我

今季最初のトレーニングマッチは1月22日、東京ヴェルディはヴァンフォーレ甲府がキャンプを張る清水ナショナルトレーニングセンター(J-STEP)まで出向き、30分3本のゲームを行った。

新型コロナウイルスの感染者を多く出している東京と比べ、地方はそこまで切迫していない。ソーシャルディスタンスを取るのは当然として、甲府の広報担当者によるメディアの仕切りはゆるやかで、行動範囲の制限も少なかった。そのため、試合前の選手たちの動きやミーティングの様子を近い距離で観察することができた。

永井秀樹監督が1本目に出場する選手たちを前にし、強い口調で言う。

「得点はゴールからの逆算だぞ」

「まずは相手をしっかり見ること。見たうえで正しい判断を下す」

1本目、1‐1。2本目、0‐2。3本目が始まる前、永井監督は選手たちにこう発破をかけた。

「(2本目の森田)晃樹がシュートを決められなかった場面。あれでチームが勝てるかどうか、選手の人生が決まるんだぞ。それなのに、誰も何も言わない。ベンチからの声も出ない。変われなければ、一生J2だ! あと30分。2点差で負けている。3点取ってこい」

そう言ってピッチに送り出したが、3本目も相手を上回れずに1‐1。トータル2‐4で敗れた。東京Vの得点者は新井瑞希とルーキーの佐藤凌我である。

チームに合流したばかりの佐藤凌が、初っ端のゲームでいきなりゴールを決めた。そのときはまだ、ふ~ん、やるなあ、単なるラッキーではなく何かあるんだろうなと興味を深めた程度である。まさかプロ1年目から全試合に出場して二桁得点に到達し、さらに13点まで伸ばそうとはつゆほども思っていない。

この日のトレーニングマッチ、試合前の光景は僕にふたつの意味で衝撃を与えた。

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