「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【マッチレポート】天皇杯-3 川崎フロンターレ戦『雨の等々力、緑が爆ぜる』(22.6.23)

2022年6月22日(水)
天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権大会3回戦 川崎フロンターレ vs 東京ヴェルディ
19:03キックオフ 等々力陸上競技場
[入場者数]7,534人 [天候]雨、弱風、気温23.9℃、湿度87%

川崎 0‐1 東京V
前半:0‐1
後半:0‐0
[得点]
0‐1 佐藤凌我(39分)
※A=アシスト、及び大会の通算数。東京Vのみカウント。

●東京Vスターティングメンバー
GK1   マテウス
DF2   深澤大輝
DF3   ンドカ・ボニフェイス
DF5   平智広(62分 谷口)
DF22 佐古真礼(46分* 梶川)
MF32 宮本優
MF34 西谷亮(62分 加藤弘)
MF7   森田晃樹
FW18 バスケス・バイロン
FW27 佐藤凌我(65分 河村)
FW10 新井瑞希(71分 杉本)
(ベンチメンバー:GK21長沢祐弥。DF23谷口栄斗。MF4梶川諒太、9杉本竜士、17加藤弘堅、19小池純輝。FW29河村慶人)

監督 城福浩

試合データなど(東京ヴェルディ オフィシャルサイト)

■西谷亮が世に出た日

あいつが走れば、何かが起きるかもしれない。佐藤凌我はそう感じさせる稀有な選手だ。

森田晃樹が相手ふたりに囲まれながら懸命にキープするが、前に出したパスはつながらない。ルーズボールを後ろに戻され、東京ヴェルディの選手が足を止めかける。だが、最前線の佐藤凌だけはあきらめなかった。

まるでパスのずれを予測していたかのように松井蓮之と競り合い、ボールをもぎ取る。ルックアップした佐藤凌の背後、味方がサポートのランニングを仕掛ける。シュートか、あるいはパスか。コースを見つけた佐藤凌はすべってくる瀬古樹より先に右足を振り、シュートはチョン・ソンリョンの伸ばした手の先を抜けてネットに突き刺さった。

「後ろを見たときに味方が走ってきていたので、パスの選択肢もありました。対峙した選手がそっちに気を取られて下がったので、相手との距離を見てシュートを選んだ。いいコースに飛んでくれましたね」(佐藤凌)

等々力陸上競技場の大型ビジョンが0‐1に変わる。39分、先制したのは東京ヴェルディ。降り注ぐ雨がライトに照らされキラキラ光っていた。

たまたま僕の周囲は東京Vの関係者が固まっており、ゴールの瞬間、ドンと跳ねた。眼下、右手に見える緑のゴール裏も盛大に沸いている。ただし、相手はあの川崎フロンターレである。1点取られた程度でおたおたするチームではない。このままおとなしく引き下がっているとはとても思えなかった。

一際目立つオレンジのスパイクはユース出身のルーキー、西谷亮。第7節のFC琉球戦(5‐2○)でプロデビューを果たすもプレー時間はわずか1分だった。実質的には初先発の今日が世に出た試合となる。

ゲームの立ち上がり、西谷は鮮やかなターンで相手をかわし、前を向いた。

「相手がジャンプしてくる感じでスピードがかなりあった。足元にボールを置くと突っ込んでくると思ったので、いっこ流す形にしました。最初は緊張感がありましたけど、ボールタッチの感覚がよく、すんなりゲームに入ることができた」(西谷)

マークする小塚和季の自由を奪いつつ、時には飛び越して川崎に圧力をかける。自らの動きで局面を有利に変えるクリエイティブなディフェンスを見せていた。このとき西谷の胸中を占めていたものを誰も知らない。

(残り 3090文字/全文: 4447文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ