宇都宮徹壱ウェブマガジン

【新連載】中村慎太郎の「百年構想の向こう側へ」 vol.1 サポーターはJリーグを滅ぼそうとしているのか?

■我々には「対話」が必要だ。

日本は、人口が減少し、高齢者の割合が増えていく「衰退の過程」にある。何せ日本の人口は10年間で1000万人ずつ減少していくとも推計されているのだ。そんな中で、一番近いところでのコミュニケーションすらうまく取れないジャンルが、今後飛躍していくとは到底思えない。

だからこそ、我々には「対話」が必要だ。サポーターはJリーグの事情をもう少し把握するべきだし、Jリーグとしてももう少し理解されるように努力するべきだ。

この稿の時点では、思いつき程度のアイディアしかないのだが、重要な会議にもサポーターを呼んで意見を求めるようにするとか、公聴会を開き、胸襟を開いて話し合えるようにするとか、何とでもやりようはある。それは非常に手間がかかるし、効率は悪いかもしれない。しかし、百年構想などという気長な理念を掲げているのだから、焦らずじっくりと話し合って、少しずつ合意を形成していくべきなのではないだろうか。そうやって対話をしながら、Jリーグのあるべき姿について考えていく光景こそが、Jリーグが目指しているものであるような気がしてくる。

「観る」「する」「参加する」。スポーツを通じて世代を超えた触れ合いの輪を広げること。

百年構想のページを眺めると、こんな言葉が書かれている。経営の達人が実権を握り、巨大なマネーが動くエンターテイメントとして成功していくのがJリーグの理想型ではないはずだ。そんなものは、流行が廃れば消えていってしまう。サポーターも、サポーターではない市民も、みんながJリーグに参加し、Jリーグを運営していくことが人生の目的になるような、そんな枠組みこそが求められているのだ。

もっともこれは大風呂敷を広げすぎたきらいがある。一足飛びにそんなことは出来ない。ただ、今の諸問題がお互いの理解不足、対話不足から生じている以上、まずはそこから始めるべきだ。こう結論づけようと思う。

それでは、次回はもう少し具体的に掘り下げてみようと思う。今回のように長めの論説になるかもしれないし、どなたかと対談するという形になるかもしれないが、いずれにせよ今後のJリーグについて何か提案をしていくような内容にしたいと思っている。

また、主筆の宇都宮徹壱氏から「なるだけ読者の反響を取り入れるような方法でやるほうが中村慎太郎らしい」というご助言を頂いた。確かにそのほうがぼくの独り相撲にならずに済み、議論も有意義な方向に進みそうなので、積極的に読者の皆様の意見を連載の内外で紹介していきたい。

共にこのような問題を考え、未来のJリーグ、日本のサッカーを形成していく同志を強く求めたい。

ご意見・ご感想・ご提案がある方は、是非徹マガ編集部(tetsumaga@gmail.com)まで!!

<次回につづく>


(C)Tete_Utsunomiya

●中村慎太郎(なかむら・しんたろう)
東京生まれ、東京育ち。東京大学農学生命研究科で水産学の研究に従事した後、作家活動を始める。ふらっと初観戦したJリーグの試合に見せられ、以降全国のサッカークラブを観光しながら訪ね歩いている。今のテーマは、気楽なサッカーツーリズム。デビュー作の『サポーターをめぐる冒険 Jリーグ初観戦をした結果思わぬことになった』(ころから)が、第2回サッカー本大賞を受賞。徹マガにも2回登場(通巻173号&206号)。

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