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【無料記事】中村慎太郎 Jリーグ百年構想の向こう側へ vol.3 対談いぬゆな氏「なぜJリーグとサポーターは対立する羽目になったのか」

ある日、ぼくは「犬の友だち」とラーメンを食べていた。パクチー山盛りのスパイスラーメンである。犬は人類が誕生してから長く人の友達であり続けた。困った時は犬に助けてもらおう。

■犬の助っ人現る!

世間一般において「犬」という言葉の意味は様々なれど、われわれJリーグ界隈では「ジェフユナイテッド千葉」のことを指す。犬といえば千葉だし、千葉といえば犬なのである。その犬の名は「いぬゆないてっど」。英語で書くと「Inuunited」。通称、いぬゆな氏。要するにジェフ千葉サポーターの友人である、いぬゆな氏に助けてもらおうというのが今回の趣旨である。

ところで、ぼくは何に困っていたのかというと……。

これまでの2回の連載において、Jリーグとサポーターの間には、ディスコミュニケーション(相互不理解)が存在していることを指摘し、対話の必要性を訴えた。そして、サポーターの立場を踏まえて、なるだけ穏当な方法でJリーグに問いかけてみることを宣言した。

そのためには、サポーターの立場や意見を包括的に捉える必要があるのだが、ぼくはサポーターの末席に居座ってからまだ2年ちょっとのルーキーなのである。ぼくが感じること、あるいはぼくの周りの人が言っていることだけに基づき、Jリーグに対して意見を送るのはある種の偏りが生じる可能性がある。

もちろん、ある種の偏りができるのは、どこをどうやってサンプリングしたとしても不可避であるため、「これも1つの意見です」と開き直ることは可能である(そもそも論説というのはそういうものだ)。しかし、今回の試みは、可能な限り「公共的」で「公正」なものでありたいと考えている。そのためには、なるだけ多くの人の意見を求める必要があると感じていた。

そこで、いぬゆな氏である。氏の属性は「ブロガー」であり、ジェフ千葉についての情報・考察をが中心に書いているが、広くJリーグについての記事も精力的に発信している。

INUUNITED

昨年、つまり2015年は、Jリーグ界隈でいくつか事件があった。後述するが、ハロウィン事件のような小さなものから、2ステージ制への移行に伴う大小の炎上などがあった。こういったややこしい面倒くさい問題に、常に切り込み続けたのがいぬゆな氏である。昨年のサポーター界隈で起こった出来事を総括する際には、大きな力になってくれるのは間違いない。

というわけで、我々は辛いラーメンを食べて一汗かいた後、お洒落なカフェへと移動して議論を始めた。

■選手は大切だけどすべてではない

中村 唐突なんですが、ジェフ千葉は今季、選手がほとんど入れ替わりましたね?

いぬゆな そうですね。23人抜けました。

中村 それだけ選手が入れ替わると、応援する気がなくなりはしませんか?

いぬゆな 最初は正直、「えー。なんだこれ」とは思いましたけど、それをきっかけに考えたんですよ。自分が好きなものは何か。どこまでがジェフ千葉なのかって。

中村 それは興味深いですね。

いぬゆな ぼくが好きなのは、トップチームの選手だけではなく、ユースやセカンドチーム、レディースなども含まれるジェフ千葉であって、選手だけではないことに気付きました。もちろん、クラブのスタッフも含まれています。選手は仲間、フロントは敵みたいな構図になっちゃうことも多いですけどね。

中村 なるほど。そりゃそうですよね。多かれ少なかれ選手は入れ替わっていきますが、スタッフには何十年も残る人もいますからね。どこまでが自分の応援しているクラブに含まれていて、どこまでが含まれていないのかというのは人によって違いそうですね。

いぬゆな そうなんです。選手はもちろん一番大事なのですが、それだけではないわけです。

中村 ぼくの応援するFC東京の場合にも、今年からはJ3のチームも出来ましたし、もちろんユースもあるし、果てはバレーボールのチームまであります。サポーターによってはバレーボールも応援している人もいるんですよ。ぼくはそこまで熱心ではないですけど(笑)。

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