宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】中村慎太郎 Jリーグ百年構想の向こう側へ vol.3 対談いぬゆな氏「なぜJリーグとサポーターは対立する羽目になったのか」

■対話という行為について

中村 徹マガでのぼくの連載の1回目と2回目はご覧になりましたか?

いぬゆな 読みました。対話がキーワードになっていましたが、実は昨年は、ぼくも対話を心がけて活動してきたんですよ!

中村 なんと!そうでしたか!(実は薄々気づいているからこそ今回来て頂いたわけですが)

いぬゆな 具体的には、Twitterのリプライやブログのコメントにすべてお返事をすることですね。

中村 ぼくも基本的には全レス派ですが、結構な手間がかかりますよね。昨年は、自分の考えが定まらないこともあったし、レスするのがしんどいのもあって、どちらかというと傍観的にJリーグと付き合っていました。

いぬゆな なんでSNSを通じて対話をしようと思ったのかというと、誰もやっていないからです。そして誰かがやる必要があると感じていました。

中村 なるほど。

いぬゆな 例えばTwitter上で怒っている人がいたとしたら、対話を試みます。そうやって一つ一つ解決していかないといけないのかなと。

中村 ぼくは怒っている人は敬遠してしまうことも多いですが、そこまでやっているわけですね。流石! 偉いです!(笑)

いぬゆな ありがとうございます(笑)

中村 怒っている人に対話を試みた結果どうなりましたか?

いぬゆな そのまま怒られることもありますが、和解して理解し合えることも多いです。ブロックされることもあります(笑)。

中村 それはそうでしょうね。

※以下、しばらくブロックについてのTwitterあるあるについて語る。残念ながら割愛。

いぬゆな 対話と議論の違いについて、Twitterで教えてもらったことがあるのですが、対話は自由なムードで行い融和的になり、議論の場合は真剣なムードで行い対決的になるそうです。ぼくは、議論ではなく対話をすることが出来たのかなとは思っています。

中村 それは面白いですね。Jリーグとの話し合いの場が持てるとしたら、議論ではなく対話をするべきでしょうね。

■Jリーグにとってサポーターと付き合うメリットはあるのか

中村 今までは、サポーター同士の対話でしたが、今度はJリーグとサポーターの対話について考えてみますか。これ、やったらどうなると思いますか?

いぬゆな どうなんでしょう。中村さんが書いていたように今までやったことはなさそうですよね。それに、対話するかどうかもあちらさん次第。つまりJリーグがやりたいと思うかどうかです。

中村 やりたいと思いますかね?

いぬゆな うーん。サポーターと付き合って何かメリットがあるかというとちょっと思いつかないんですよね。ロック総統がよく言っているように、サポーターと付き合うのが得だと思わせるのが大事だと思います。

※ロック総統 コスプレが大好きなおじさん。ホンダロックサポーター。
ロック総統 革命的日記
ロック総統とライト曹長の「革命!錦糸町フットボール義勇軍」

中村 さすがいぬゆなさん、コアなところもチェックしてますね(笑)。でもね、ふふふ。ぼくは明瞭にメリットがあると思っていますよ。Jリーグには、見世物を行いお客さんを集めてお金を払ってもらう興行としての側面もありますし、とても大事なことではあります。その視点で言うと、うるさい客の言うことを聞きすぎるとロクなことはありません。まさしく、「すべてのジャンルはマニアが潰す」という状況に近づいてしまいます。

いぬゆな ふむふむ。

中村 でも、Jリーグはただの興行ではなくて、地域文化になっていかなければならないという宿命を負っています。単に全国各地でやっている見世物ではないのです。各地の人々がクラブに思いを馳せ、クラブに参加しながら、年を取っていく。子供や孫も同じようにクラブへと思いを馳せていく。これを繰り返していくことでJリーグは文化として確固たるものになっていきます。それを目指している以上、サポーターはただの客ではないわけです。共に文化を築いていくパートナーです。

いぬゆな そういう視点で考えるなら、速攻で手のひらを返します(笑) 確かにサポーターとの対話は必要と言えるかもしれませんね。

中村 損か得かではなく宿命です。サポーターと対話することによって得られる、直近的な金銭的なメリットは正直言って大きくありません。しかし、すぐに金になることだけが正解ではないのです。サッカーを文化として根付かせて行くには、サポーターの参加意識が非常に重要です。今は、自分のクラブには参加しているけど、Jリーグには参加していないという意識レベルなのかなと。

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