【無料記事】中村慎太郎 Jリーグ百年構想の向こう側へ vol.4 対談いぬゆな氏「Jリーグよ、俺たち色に染まれ!」
早いものである。月1で徹マガに寄稿しているこの連載はもう4回目となった。正直に言うと行き当たりばったりで始めた感はあったのだが、読者の皆様から頂いた多くの反響から刺激を受け、少し前には思ってもみなかったことを考え始めている自分がいる。読者の皆様に深く感謝しつつ、少しでもJリーグと日本におけるサッカー文化の進展に貢献できるよう努力する次第である。
さて、前回までの展開を簡単に整理するところから始めたい。
ぼくは、Jリーグと各クラブのサポーターの間に摩擦が生じていること、その原因が「対話不足」であることを指摘した。そして、そのような状態では、サッカーは文化として日本に根付いていかないのではないかという懸念を示した。
対話が不足しているなら対話をすればいい。非常にシンプルな問題である。しかし、これまでリーグと各クラブのサポーターが対話したことは知りうる限りはなく、ノウハウが存在していないようだ。そういう意味では複雑でややこしい問題のようにも思える。
そして、この問題に立ち向かう際に、ぼく一人では知識、経験などに不足を感じたため、犬の友人「いぬゆな氏」(ジェフ千葉サポーター)にご助力を願い、対談を行ったのが1つ前の回である。
前回の対談において、我々の周辺のサポーターからJリーグに対するご意見を募集したところ、熱のあるご意見を多数寄せて頂いた。今回は、皆様のご意見を出来るだけ紹介しながら対談を進めていこうと思う。
■サポーターって何なんだろう?
中村 どうもどうも、今回もよろしくお願いします。
いぬゆな どうもどうも、よろしくお願いします。
中村 頂いた意見をある程度まとめて、Jリーグへの提議・提案を行いたいと思います。ひとつひとつ見ていく前に、前回の反響をお聞きしたいと思います。どうでした?
いぬゆな うーん、まぁぼちぼちですかね。(村井満)チェアマンに対する単なる誹謗中傷みたいのが来るかと思ったのですが、そういうのはなかったですね。
中村 ああいうのは便所の落書きみたいなものですからね。ちゃんとした意見を募集すると、やはり熱のあるしっかりとしたものが集まりますね。
いぬゆな そうですね。そういう(誹謗中傷する)人たちは、僕の遊び相手なのでちょっと残念でした(笑)。
※ここまで話したところで、いぬゆな氏は唐突に押し黙って周囲を見渡しはじめた。我々は庶民と学生のパラダイス「サイゼリア」の一席に座っている。いぬゆな氏は、耳を澄ませて周囲の会話に耳を澄ませているようであった。
中村 え? どうしました?
いぬゆな まぁ、わかってたんですけど、聞こえないですね。
中村 聞こえない? 何がですか?
いぬゆな このサイゼリアには若い人を中心にたくさんの人が集まっているのに、Jリーグの話をしている人がいませんね。
中村 あー、なるほど。ぼくもそういう気持ちになることが時々あります。松本のレストランでは、隣の人が松本山雅の話をしているなんてことが何度かありましたけど、東京にいてJリーグの香りを感じることは滅多にないですよね。
いぬゆな やっぱり若い人も、老人も、みんなJリーグの話をしていてほしいんですよね。世代を超えた共通言語になってほしい。
中村 その通り! ぼくも全く同じことを考えていて、今それ、とある原稿に書いていたところなんですよ。それが、サッカーが文化として根付いた状態ですよね。そういえば、同じ保育園のママさんが実は千葉サポと発覚したのですが、「世界三大カップ戦とりましたね! おめでとうございます!」と唐突に言ったら大喜びしてましたよ(笑)こういう交流が増えてくると楽しくなっていきますね。
いぬゆな それは嬉しい話ですね!
※世界三大カップ戦:ワールドカップ、チャンピオンズリーグ、ちばぎんカップのこと。千葉県を中心にJリーグ界隈で使われている言葉。
※ちばぎんカップ:プレシーズンに行われる柏レイソルとジェフ千葉の試合。2016年は3-0でジェフ千葉が勝利。
中村 ということで、ぼちぼち本論に入りましょう。いや、その前に、サポーターってなんだろうってところがですね……
いぬゆな そこですよね! 定義が決まっていないから、みんな「俺が名乗ったらサポーター」としか言いようがないんですよ。ぼくは、サポーターを細分化して定義づけていくべきだと思っています。現状だとコアサポとそれ以外という分け方が一般的ですけど、それだけでは割り切れないものがあります。
中村 なかなかしんどい作業で、山ほどクレームが来そうですが、サポーターの定義は非常に重要な作業だと思うので、やるべきかもしれませんね。結論は出なくても議論する分にはいいのかな、と。まぁ今やりだすとそれだけで今日が終わってしまうので、それはまた次の企画でやりましょう!
いぬゆな 是非!
中村 そういえば、サポーターとは何だろうかというテーマを考える上で、興味深いお便りを頂いていますよ。ここで紹介してもいいかわからないので名前は伏せますが、とある選手の「広報」のボランティア活動をしていた方からです。連載の第1回に対して寄せて頂いたものなのですが、正直言って驚きました。
いぬゆな それは面白いですね。そういうサポーター活動があるとは思わなかった。
中村 試合のときに大声を出して選手を鼓舞するというのもサポーター活動ですが、それが全てではないということですね。試合中は騒ぎたい人は騒げばいいし、ゆっくり落ちついて見たい人は見ればいい。ぼくはそう思うようになりました。大声を出し、見かけ上必死に応援していた人だけが真のサポーターだ、というような考えの人もいますけどね。
いぬゆな 個人広報の話を聞いて思ったのですが、Jリーグでは選手のセカンドキャリアを考えることが今重要な課題になっています。元選手とビジネスを繋げることも、ある種のサポート活動だし、非常に役に立つものではないかなと思っています。
中村 そうですね。元代表選手などを除いた一般的なJリーガーの場合、サポーター界隈では絶大な人気と知名度を誇りますが、世間一般においてはどうしてもインパクトが小さいですからね。インパクトが大きいところに繋いでいけると、みんな幸せになれる可能性はありますね。
いぬゆな 元選手がしているビジネスには興味を持つサポーターもいると思うんですよね。
中村 J’s Goalに選手の就職活動するページがあっても面白いかもしれないなぁ。Jリーガーの箔が落ちる、みっともない、なんて考え方もあるかもしれないけど。今の時代は、ネット上で話題になることが正義ですからね。
いぬゆな 単なる就職活動ではなくてですね、元Jリーガーがセカンドキャリアを探していくドキュメンタリーを記事にしていくと面白いと思うのですよね。
中村 そして、その記事作成依頼がぼくのところに来れば、ぼくの生活も少し安定するかも……。
いぬゆな 頑張ってください(笑)