宇都宮徹壱ウェブマガジン

「文化」にこそなっていないけれど 週末のなでしこリーグで感じたこと

 5年ぶりとなる、キリンカップの取材で名古屋に来ている。豊田スタジアムでのブルガリア戦(6月3日)が終わったら、取材とイベントで岡山と鳥栖に足を伸ばし、吹田スタジアムでのデンマークもしくはボスニア・ヘルツェゴビナ戦(6月7日)を取材して、翌日に帰京。その後、すぐさまユーロ2016が開催されるフランスに向かう。今回の滞在は11日間だが、チケットや宿を押さえた以外はほとんど準備ができていない。何となく焦燥感を覚えつつ、来月からスタートする『宇都宮徹壱WM』やイベントの準備を粛々と続けている今日このごろである。

 そんな中、今回は女子サッカーについて考えてみることにしたい。ちょうどキリンカップと同時期、高倉麻子新監督率いるなでしこジャパンはアメリカとのアウエー戦2試合を予定している(6月3日にデンバー、6日にクリーブランド。いずれも日本時間)。新体制となった日本は、いきなり世界女王の胸を借りる形になる。初戦のチケット約1万8000枚のチケットは完売となったそうだから、新たな船出としてはこれ以上ないシチュエーションとなることだろう。(参照)

 さて先週末、久しぶりになでしこリーグを観戦してきた。カードは、浦和レッズレディース対AC長野パルセイロレディースである。浦和は、前身のさいたまレイナスFC時代を含めて3回の優勝を誇る名門。対する長野は、現在の名称になって初めてのトップリーグ参戦である。しかし今季、浦和はなかなか勝てない試合が続いてお、第10節を終えて最下位の10位。一方の長野は、エースストライカーの横山久美が順調にゴールを量産して、現在4位につけている。名門対新鋭という、にわかファンにとっても実に興味深い顔合わせと言えよう。

 実はこの試合、当初は取材申請で入ろうと思っていたのだが、いろいろ考えてカミさんとチケット観戦することにした。理由はふたつ。いち観戦者として、なでしこリーグの現状を観察したいと思ったこと。そして、今年3月のリオ予選があのような残念な結果となった時に、「今年こそはなでしこリーグを観に行こう」とカミさんと約束していたこと。「女子サッカーが文化になる」ためには、ただ代表チームを応援するだけでなく、国内リーグの活況も欠かせない。その点について、これまでまったく寄与してこなかったことに、われわれ夫婦はいささかの後ろめたさも感じていた。というわけで5月28日、ふたりそろって浦和駒場スタジアムへと向かうことと相成ったのである。

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