宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料記事】献本御礼『松本山雅FC完全読本2016』洋泉社編集部編

 いまや「地方リーグの理想的モデル」として話題に上ることの多い松本山雅FC。今季の注目ポイントが網羅された「クラブ公認」の完全読本である。私も山雅の集客、そして松田直樹に関する原稿を書かせていただいた。

 特定クラブのファンやサポーターをターゲットにしたムック本。いわゆる「あるある本」もそうだが、最近のサッカー本は「ニッチだけど確実に数字が読める」ターゲットにピンポイントで投下する書籍が増えているような気がする。それはそれで否定はしないし、ファンは喜ぶかもしれない。ただし、そこには問題点が2つあると思う。

(1)読者層が広がらない。

(2)似たような書籍が増える。

 以上2点について、作り手がどう考えているのかが気になった。

 特に(2)に関して言えば、カンゼンの『フットボールサミット』が、クラブものの「完全読本」のフォーマットをすでに確立している。本書もおそらく『フットボールサミット』を意識していたはずだが、独自性はあまり感じられず、しかも価格が200円高い。熱心なファンは買ってくれるだろうが(私も寄稿しているので売れてほしいが)、もう少し独自性を意識してほしかった、というのが正直なところだ。

 せっかく本にするのだから、作り手ももっと楽しもうよ~。でないと面白い本は作れないよ~。と、語尾が一平くんみたいになってしまったが(笑)、それが私の偽らざる気持ちだ。久々に紙媒体で書く場を与えていただいたことには感謝している。が、私は書き手であると同時に読み手でもあるので、あえて今回は厳しめに書かせていただいた。個人的には、鐡戸裕史とロック総統のインタビューが面白かったことを付け加えておく。定価1500円+税。

【オススメ度】☆☆★★★

「こんな時代だからこそ、もっとオリジナリティを!」

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ