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宇都宮徹壱ウェブマガジン

「サッカーというのは清濁一緒、世界の縮図なんですよ」(賀川浩=通巻244号より) バックナンバーで綴る「徹マガ・記憶に残るインタビュー」<後篇>

 2010年5月の創刊から2016年に至る『徹マガ』の膨大なコンテンツの中から、読者の皆さんの反響が大きかったものや、個人的に思い出深いものを選りすぐって再編集した当企画。今回はその後篇をお届けする。

 今回、バックナンバーのリストを作成してみて、あらためて思ったのがインタビュー取材させていただいた方々の多士済済ぶりとバリエーションである。個人メディアゆえ現役の選手は非常に少ないのだが、指導者、サポーター、同業者、エージェント、研究者、クラブ社長と、実にさまざまな方にお話を伺うことができた。『徹マガ』を6年続けてきて、何が一番ありがたかったかといえば、このメディアを通してさまざまな出会いやつながりができたことである。

 そんなわけで今回も、同業者、サポーター、プロデューサー、さらには「革命家」と、サッカー界隈のホットな人々へのインタビューをダイジェストでご紹介する。なお、7月からスタートする『WM』では通巻20号から194号までのバックナンバーすべてが、段階的にアーカイブ化される。そしてWM会員になると、『徹マガ』の過去のバックナンバーが自由に閲覧できる予定だ。当企画をきっかけに、ぜひとも入会をご検討いただければ幸いである。

■ロック総統(Miyazaki shock boyz代表)

 通巻149号 「Jが無いことは恥ずかしい事じゃない!」(2013年5月31配信)

 後篇のトップを飾るのは、ロック総統。革命家であり、JFLの伝道師であり、ホンダロック宮崎の熱烈なサポーターである総統は、インタビュー当時「ええじゃないか」運動に邁進していた。おりしも翌14年からJ3が開幕することを受けて「JFLでもええじゃないか」「今そこにあるサッカーを愛せ!」といったテーゼを実践すべく、試合前や試合後に総統が相手チームのゴール裏に「乱入」するのは、今でもJFLならではの風物詩となっている。今はJクラブとなった町田ゼルビアや藤枝MYFCが、まだJFLで戦っていた頃の様子を窺い知る上でも貴重なインタビューだ。

――総統の「ええじゃないか」運動は、乱入によって両チームのサポーターが混然一体となるところでクライマックスを迎えます。今日も相模原のサポーターたちが乱入してきたわけですが(笑)、そもそも乱入自体は「ええじゃないか」以前からあったようですね。

総統 そうですね。きっかけは2年前(11年)の松本山雅戦での乱入です。最初は水戸と山形のコールの掛け合いみたいなのを山雅とやろうかって話をしていたんですけど、(ホンダロックの)社員さんたちの到着が遅れて、それで僕ひとりという感じになってしまったんですね。「やべえ、これじゃあ掛け合いができないんだけど」という感じになったんです。ただ、この時は山雅のサポーターが口蹄疫のための募金活動をやってくれていたんですね。

――口蹄疫の感染防止のために、ホンダロックのホームゲームの会場が変更になって、さらに無観客試合になったのは、その前年の2010年のことでしたね。

総統 そうなんですよ。なので、お礼の意味も含めて僕が山雅のゴール裏に乱入したら、結構ハマって、twitterとかYouTubeとかで紹介されて「なんか面白いね、ホンダロック」って言われるようになったんです。

――なるほど。それにしても今年から乱入が「ええじゃないか」で統一されるようになったのは、どういうきっかけがあったのでしょうか?

総統 まず、今年は(ガンダムの)シャアのコスチュームが(メンテナンスのため)使えないので、乱入を盛り上げるのに何かいいモチーフはないかなと。それでYouTubeをいろいろ見ていて、ぴぴっとインスパイアされたのが「ええじゃないか」だったんですね。

――おそらく、今村昌平監督の映画『ええじゃないか』(1981年)じゃないですかね。泉谷しげるが主題歌を歌っていました(笑)。やっぱり総統にとって、今のJFLはまさに幕末のイメージなんでしょうか?

総統 そう、幕末です(笑)。もうひとつ言うと、僕は裏の仕事で脚本や漫画の原作を書いていて、そのための資料をいろいろ読むんですね。で、日本史の本を読んでいると、坂本龍馬のくだりのところで「ええじゃなか、ええじゃないか」ってやっていて、それをバックに斬り殺されるシーンがあったんです。「いいなあ、オレの滅びの美学にすごくマッチしているなあ」と思って。

――(笑)。この「ええじゃないか」運動って、まさにプロレスに似ていて、お互いの呼吸が合わないと、すごく白けた雰囲気になってしまうと思うんですよ。で、これはYouTubeで確認したんですが、野津田での町田戦では相手が「目指せ、J2復帰!」という感じで、まったく余裕がない感じがひしひし伝わってきましたね。

総統 幸い、(マスコットの)ゼルビーくんがわれわれの相手をしてくれましたけどね。(参照)

――まあ、仕方がない話だとは思うんですよ。それでも町田とロックといえば、08年に石垣島で開催された地域決勝で共にJFLに昇格した「同期」であり、一部で「ゼロックスーパーカップ」と命名されるくらいの伝統の一戦でしたよね?

総統 そう、「ゼロックス」ではないですよ! ゼルビアの「ゼ」と「ロック」で「ゼロックスーパーカップ」(笑)。昔は、お仏壇に飾るような小さい器に金色に塗って、「カップです」みたいな感じで楽しくやっていたんですよ。でも今は、ちょっと余裕がないというか、殺伐とした感じですよね。

――やっぱり、一度Jの空気を吸って、たった1シーズンでJFLに出戻ってしまったら、そうなってしまうのも無理もないですよ。ただ「1年でJ2に戻りたい」という気持ちも大事ですが、一方で今いるリーグを楽しむことも大事なんじゃないかと。ところで5月19日の藤枝MYFC戦は、「藤ロックフェスティバル」なんですよね? これも藤枝の「藤」と「ロック」からですよね。具体的に何をするか決まっていますか?

総統 とりあえず「エアギター選手権はやろうぜ!」って話はあります。(参照)

――それはすごい(笑)。にしても、普段Jリーグを見ているサッカーファンでも、JFLに関しては「レベルが低い」とか「マニアック」とか、思っている人が多いと思うんですよ。そんな中、JFLの面白さや奥深さをお笑いに転化してオープン化していく総統の活動は、非常に興味深いものがあります。こうした発想って、かつて総統が関わっていた電撃ネットワーク時代の経験が大きかったのでしょうか?

総統 そうかもしれないですね。電撃ネットワークの海外公演で感じたのは、外国人を相手にショーをやる場合、どうしても言葉の壁があるじゃないですか。そこは、どんなに英語の発音が良くっても、なかなか超えられるものではない。でも、例えば痛みとか下ネタというのは誰にでも笑いになる。つまり言葉を超えられるんですよね。

――確かにそうですよね。海外移籍した選手も、向こうの選手と仲良くなるきっかけは下ネタだったという話はよく耳にします。

総統 だから笑いって、みんなを幸せにできるツールのひとつなんですよ。たとえば勝ち負けっていうのは、一生懸命やったって勝てない時はある。もちろん勝った方がいいに決まっているけど、勝ち負け以外の楽しみというのも、もっと作っていきたいですよね。

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