宇都宮徹壱ウェブマガジン

陸前高田で考えた、クラブとサポーターの距離感 川崎サポにとっての『高田スマイルフェス2016』

 7月1日の宇都宮徹壱ウェブマガジン(WM)スタートと同時に始まった東北取材は、7月5日にすべての日程を無事に終えることができた。今回の取材で、あらためてわかったことが3点。まず、東北は広いということ(弘前から陸前高田まで鉄路で6時間かかった)。逆に、仙台や盛岡は実は東京から意外と遠くないということ。そして、新幹線はやぶさは座れないということである(結局、往路も復路も座席が取れず、撮影用のパイプ椅子が大活躍した)。ともあれ現地での取材も含めて、いろいろと実りの多い旅であった。

 今回の東北取材はJFLに所属する2つの青森県のクラブ、ラインメール青森とヴァンラーレ八戸がメインだったのが、3日に岩手の陸前高田で行われた『高田スマイルフェス2016』の取材もまた、私にとって極めて重要であった。今回のフェスは、J1の川崎フロンターレの陸前高田での復興支援活動と、地元の人々との5年にわたる交流の集大成。その経緯と当日の模様についてはこちらをご参照いただくとして、本稿ではコラムで書ききれなかったことについて言及したい。具体的には、川崎のサポーターについてである。

 イベント当日、彼らが会場の上長部グラウンドに到着したのは、開場2時間前の午前8時であった。前日にベガルタ仙台とのアウエー戦があり(3-0で川崎が勝利)、現地で一泊してから早朝の列車で駆けつけてくれたのである。その数、20名ほどいただろうか。到着すると、さっそく持参した巨大な横断幕を広げて、実際の試合前の準備さながらにゴール裏の風景を作り上げていく。『川崎華族』代表の山崎真さんは「今日はこのグラウンドで川崎と仙台の選手がプレーするわけですから、僕らも本気で応援することで、Jリーグの雰囲気に近いものを演出しなければならない」と意気込みを語る。

 もっとも彼らは、クラブ側から依頼されてやって来たのではない。私は当日の台本を1部いただいたのだが、スタッフのリストに『川崎華族』もサポーターの個人名もなかった。つまり彼らは、あくまでも「勝手連」的にこのイベントに参加しているのである。そんな川崎サポの行動様式は、「サポーターのあり方」というものについて、あらためて考察するよい機会となった。

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