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【無料記事】2012年の記録を読み返して 今日の現場から(2016年7月16日@野津田)

 今週末は16日に町田市立陸上競技場(通称、野津田)で開催されたJ2リーグ第23節、FC町田ゼルビア対ジェフユナイテッド千葉を取材してきた(結果は3−2で千葉が勝利)。試合は序盤から激しい点の取り合いとなったが、後半25分に町田が重松健太郎のゴールで逆転。しかしここから千葉が驚異的な底力を見せて、丹羽竜平(後半37分)とオナイウ阿道(後半45+5分)の連続ゴールで再逆転に成功する。千葉の勝利は6月8日(対モンテディオ山形戦)以来、実に6試合ぶり。ようやく長いトンネルを脱することができたことで、選手はもちろんサポーターも一様に深い安堵の表情を浮かべていた。

 それにしても千葉が町田のホームにやってくるのは、なかなか珍しいことだ。記録を読み返してみると、野津田での両者の過去の対戦は、2012年5月13日のJ2リーグ第14節が最初で最後。千葉はJ2に降格して3シーズン目、町田はJ2昇格最初のシーズンであった。結果は6-1で千葉が圧勝(田中佑昌がハットトリックを達成している)。是が非でもJ1への復帰を目指す千葉と、昨シーズンまでJFLを戦っていた町田とでは、力の差が歴然としていた。

 ところが興味深いことに、リターンマッチとなったフクアリでの両者の対戦(8月12日)では、ドラガン・ディミッチの1ゴールを守り切った町田が1-0で勝利している。このシーズン、千葉はホームで5敗しているのだが、そのうち1敗は16試合勝利なしで最下位に沈んでいた町田に与えたもの。「たられば」の話になってしまうが、もしもこの試合に勝利していれば、千葉が得失点差で湘南ベルマーレを上回り、自動昇格の2位でフィニッシュしていた。

 その湘南の最終節の相手は、アウエーの町田戦。これに3-0で勝利し、湘南のJ1昇格と町田のJFL降格が決まった。一方、5位に終わった千葉は、このシーズンから始まったJ1昇格プレーオフ決勝で大分トリニータに敗れ、またしてもJ1復帰の夢を絶たれてしまう。11月23日(プレーオフ決勝)の国立競技場も、11月11日(J2最終節)の野津田も、どちらも冷たい雨が降っていたことをよく覚えている。こうしてみると、町田と千葉が初めて同じカテゴリーで相対した2012年は、さまざまな意味で思い出深いシーズンであった。

 あれから4年。町田は苦節と努力の末にJ2復帰を果たし、千葉はいろいろあってJ2に留まり続けた。両者ともメンバーは大きく変わり、この日のベンチ入りメンバーのうち4年前から所属しているのは、町田の鈴木崇文(この日は出番なし)と千葉の町田也真人(前半5分に先制ゴールを挙げた)のみ。時の移ろいを感じさせるのは、試合内容についても言えた。試合に勝ったのは千葉だったが、町田は堂々とした戦いぶりを見せて、J2首位に立ったことがフロックでないことを示していたからだ。4年という月日は瞬く間だが、クラブという生き物は大きく変化する。2012年の記録を読み返してみると、味わい深さが倍増する野津田での一戦であった。

<この稿、了>

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