宇都宮徹壱ウェブマガジン

「クリスティアーノ・ロナウドはやっと僕に追いついたんですよ(笑)」 市之瀬敦(上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授)インタビュー<2/2>

<1/2>はこちら 

■なぜ今大会は不協和音がなかったのか?

――今大会の快挙について、忘れてならないのがクリスティアーノ・ロナウドの存在感です。決勝は残念ながら前半でリタイアしましたが、今大会はさまざまな記録を打ち立てました。まずEUROでの通算ゴール数が、プラティニと並んで9ゴール。通算出場試合数も21に伸ばして単独1位です。ちなみに歴代ポルトガルのキャップ数も133試合で、2位のフィーゴ(128試合)を大きくリードしています。

市之瀬 去年くらいに超えたのかな。18歳からA代表をやっていますからね。大きな怪我さえしなければ、150試合も軽く突破するでしょう。

――先生はデビュー当時からロナウドを見続けているわけですけれど、今大会の彼をどうご覧になっていますか?

市之瀬 キャプテンになってから人間的にも成長していますよね。けっこう面倒見がよくて、ナニの兄貴分みたいな感じだし、年上のクアレスマを立てているようにも見えるし。そういえば3人ともスポルティング・リスボン出身でしたね。

――かつてのポルトガル代表って、スポルティング、ベンフィカ、FCポルトのビッグ3の派閥があったと言われていましたね。

市之瀬 最近はあまり聞かないけれど、84年はひどかったらしい。ホテルでもベンフィカのテーブル、スポルティングのテーブル、ポルトのテーブルがあって、お互いほとんど口をかない。監督についても「テクニカルコミッション」という役職を作って、実質3人いましたから、無茶苦茶ですよ(笑)。それでもベスト4まで行ったんだから、サッカーって不思議ですよねえ。ただし今回のメンバーに関しては、そういった不協和音はほとんど聞こえてこなかったです。

――それはロナウドのキャプテンシーがあったからですか。

市之瀬 それもあるし、今では海外でプレーしている選手がほとんどですから「ベンフィカだ」「スポルティングだ」という時代ではないのかもしれないです。そういう意味ではポルトガルも国際化して、かつてのような地域主義は希薄になったのかもしれない。あと、ナニとクアレスマが変にロナウドを意識しなくなったのは大きかったかな。特にクアレスマは、年齢的なこともあるかもしれないけれど、今大会はジョーカーに徹していましたよね。

(残り 4196文字/全文: 5135文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ