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【無料記事】「バルセロナ派」の指揮官が得た泥臭い勝利 今日の現場から(2016年7月30日@江戸陸)

 7月最後の土曜日は、江戸川陸上競技場を訪れた。カードは東京23FC対VONDZ市原FC。J1から数えて5番目、関東リーグ1部の試合である。JFL以下のカテゴリーは、このところ地域決勝と全社(全国社会人サッカー選手権大会)、そしてFC今治関連で四国リーグしか見ていなかった。とはいえ、1位(東京23)と2位(市原)の首位決戦となれば、理屈抜きで観に行くしかない。

 後期第5節を終えての順位表を確認すると、東京23が勝ち点32、市原が29。この試合で市原が勝利すれば、得失点差で市原が首位に浮上することになる。試合は、追う立場の市原がほとんどの時間帯を支配するも、東京23はGK土井秀徒が再三にわたりファインセーブを連発。粘りに粘った末に後半44分、CKから味方がバーに当てたボールを飯島秀教が押し込み、ホームの東京23が1-0で勝利した。

 試合後、東京23の羽中田昌監督と話す機会があった。「今季は地域決勝を意識しながら戦っているのでは?」という私の質問に、「どこかで意識していると思います」と打ち明けた上で、こう続ける。「もちろん、目の前の相手をどう倒すかで一生懸命なんですけど、試合が終わると『ああ、これでは地域決勝では勝てないな』という反省は残りますね。今日だって勝つには勝ちましたけど、相手のペースで蹴り合いになってしまいましたから」。

 羽中田監督が東京23の監督に就任したのは昨シーズンのこと。1年目は関東リーグ1部で4位に終わり、地域決勝の出場権を懸けて臨んだ岩手での全社もベスト8に終わった。「(今季)全社枠は考えていません。絶対に(関東リーグで)優勝して地域決勝に出場します」という言葉には、ある種の切実さすら感じられる。

 そういえばこの市原戦では、ポゼッションや正確なパスワークはあまり見られず、むしろ泥臭い勝利への執念のほうが際立っていた。2008年、羽中田監督が四国リーグ時代のカマタマーレ讃岐を率いていた時は、地域決勝でバルサ的なサッカーを志向していて、良くも悪くも度肝を抜かれたことを思い出す(結果、1次ラウンド2位で敗退)。羽中田監督にとって、今のところこれが唯一の地域決勝だ。

 あれから8年。羽中田体制2年目の東京23は、上手さよりも泥臭さとしたたかさが感じられるチームに仕上がっている印象を受けた。サポーターがメインスタンドに掲げる横断幕には「我々は常に挑戦者! 泥臭く勝利を!!」。指揮官が本心でそれを望んでいるかどうかは不明だが、こと「JFL昇格」というミッションに関して言えば、方向性としては悪くないと思う。

 羽中田監督とは「今度は地域決勝でお会いしましょう」と握手してお別れした。果たして「バルセロナ派」の指揮官は、地域決勝という「世界の常識が通用しない」特殊な環境でどのような采配を見せるのだろうか。まだ関東リーグの優勝が決まったわけではないが、個人的には今年の地域決勝の楽しみがひとつ増えたような気分になっている。できることなら、FC今治とハイテンションな好ゲームを繰り広げてほしいものだ。

<この稿、了>

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